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試合後に敗者クレベルが激怒…物議を醸す“朝倉未来のリベンジ勝利”、RIZIN判定は適切だったのか?“絞め技失神負け”前回対戦との「最大の違い」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2025/07/28 17:03

試合後に敗者クレベルが激怒…物議を醸す“朝倉未来のリベンジ勝利”、RIZIN判定は適切だったのか?“絞め技失神負け”前回対戦との「最大の違い」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

7月27日の『超RIZIN.4』にて、朝倉未来がクレベル・コイケに判定勝ちを収めた

試合の展開を作っていたのは朝倉だった

 それでいてリスク管理も見事だった。テイクダウンディフェンスが奏功したのは、スタンドの打撃で深追いしすぎなかったからだ。グラウンドも然り。攻めに集中しすぎることなく、ある程度のところで立ち上がる。そう見ると、試合の展開を作っていたのは朝倉ということになる。

 寝技で極められない自信はある。だがそれでも「クレベルの寝技は異次元なので」という警戒心は保ち続ける。この日の朝倉は、“攻”と“防”のバランスが絶妙だった。試合中、何度も起きた朝倉コールの記憶はないそうだ。それだけ、攻防に集中していた。

 一方、クレベルの闘い方にも前回との違いがあった。前回は接近戦でヒジ、ヒザを当ててから引き込んで三角を極めている。「タックルが決まらないから引き込む」のではなく、いわば「攻撃的引き込み」だった。

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 しかし今回は、スタンドでの打撃で勝負する姿勢は見られなかった。蹴りは出していたのだが、組みつくためのフェイントのようなものに見えた。今回もストライカーである朝倉に打撃で立ち向かい、脅かす場面があれば、展開は違っていたのではないか。

『超RIZIN.4』の前半戦では、扇久保博正がしつこくタックルを仕掛けてホセ・トーレスに判定勝ちしている。クレベルの闘い方に似ていたが、扇久保はスタンドの打撃でも渡り合っていた。ダメージの面で大きな差をつけさせなかったのだ。なおかつグラウンドではバックからチョークを狙う。そこまで攻めたから「効果的」としてジャッジに反映された。そこがクレベルとの違いだった。

勝負を分けたのは“両者の前戦”か

 寝技を恐れなかった朝倉。打撃勝負をしなかったクレベル。この違いが勝負を分けたのではないか。そしてこの差は、両者の前戦に関係があるのではという分析も成り立つ。

 5月のドーム大会、朝倉は鈴木千裕に勝って復帰戦に勝利した。増上寺で開催された今大会の記者会見でも自信満々で、クレベルと向き合うと笑顔も見せている。「今の未来は気持ちの面では無敵でしょう」と榊原。それだけ鈴木戦の勝利が大きかったのだ。引退転じて絶好調。そんなこともあるのがファイターのメンタルなのだろう。

 クレベルは同じ大会でキャリア初のKO負けを喫している。シェイドゥラエフのパンチに、一度も寝技に持ち込むことができず敗戦。今回のクレベルにはその“残像”、大きく言えばトラウマが残っていた可能性もあるのではないか。だから打撃戦をひたすら避けた。あくまで“そう見えた”という話ではあるが。

 試合は僅差の展開だった。「フィニッシュを狙ってずっと攻めていたのは自分」というクレベルの感覚も、決しておかしなものではない。だが、より説得力があるのは打撃のダメージで朝倉勝利という見方だろう。榊原は、RIZINでは「試合をジャッジに委ねない」ことが大事なのだと強調した。フィニッシュを狙って攻めていき、その結果として隙が生まれて負けても評価は下がらないというのがRIZINの世界観=運営イズムなのである。

【次ページ】 “絶好調”朝倉未来の今後は…

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