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王者・大阪桐蔭を決勝で撃破…「継投で乗り切れた」東大阪大柏原の元プロ監督と「エースに託した」高校野球の名将が明暗を分けたワケは? 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2025/07/28 17:30

王者・大阪桐蔭を決勝で撃破…「継投で乗り切れた」東大阪大柏原の元プロ監督と「エースに託した」高校野球の名将が明暗を分けたワケは?<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

大阪桐蔭を破って2度目の甲子園出場を決めた東大阪大柏原の土井健大監督。同校は2011年の初出場時も大阪大会決勝で大阪桐蔭に勝利している

土井監督のバックグラウンドとは

 そう語る土井には独特な観察眼がある。履正社高で捕手・キャプテン、4番として2006年の甲子園出場に貢献。それまで春のセンバツ出場がなかった履正社を導いたリーダーだった。そして、卒業後はオリックス、巨人でプレーした。プロでは華やかな成功を収めることはできなかったが、今、彼が下す決断の多くはそうした経験に裏打ちされている。

 東大阪大柏原の主将・竹本歩夢は指揮官とのやりとりをこう話す。

「監督さんにはいつも余裕があるんです。自分はいつも一直線で物を見てしまったりするんですけど、監督さんにいろいろアドバイスをもらって視野を広げてもらえるというか。そういうところは元プロなんだな、というのは感じます。配球面でも、序盤は打たせていって、終盤に三振を狙える球を探していけばいいからっていう話をしてもらいます」

元プロ、キャッチャー出身監督の特徴

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 高校野球の指導者の采配にありがちなのが、「エースで負けたら仕方がない」というような、裏付けよりも精神論で起用するケースだ。対・相手よりもチームの哲学を優先する。絶対的エースや精神的支柱がチームにいると、そうした傾向が強い。

 一方、プロでプレー経験のある、特に捕手出身に多いのは、相手打者の特徴を分析し、投手起用を決めるという裏付け重視の指揮官だ。土井はまさにそのタイプ。同じくプロで捕手としてプレーした智弁和歌山の中谷仁も、そのような決断をする。勝負の世界で、あくまで対・相手という戦いを繰り広げてきたからだろうか。

 準決勝の東海大大阪仰星戦でも、土井の目利きは試合終盤に光った。背番号「3」の古川恵太が先発。7回から継投に入ると、土井はエースナンバーの川崎龍輝をマウンドに上げた。しかし、1失点してなおも8回にピンチを招くとあっさり金光亮哉にスイッチした。

 土井はその理由をこう説明した。

【次ページ】 エースよりも球種でピッチャー交代

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