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女子体操・宮田笙子が激白60分「周りの視線…本当に怖かった」 規律違反によるパリ五輪辞退で「体操を辞めることも考えた」本人だけが知る“真実”
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2025/07/24 11:00
2024年の経験を経て、新たな挑戦の道を歩み始めた女子体操・宮田笙子(20歳)のインタビュー(初回/全3回)
「エース」と呼ばれ続けた重圧に苦しんだ
しかし、宮田は自分の感情に正面から向き合うことを選んだ。
「悩んでばかりだったのですが、結局、悩んでいるだけでは何も解決しない。そう思い、全日本選手権を目標としてではなく、自分が体操を楽しむためにという方向で捉えることにしました。順位を気にせず楽しもうと思うことで前に進めました」
宮田が個人総合の日本一を決めるNHK杯を初めて制して世界選手権の代表になったのは、福井県立鯖江高校3年生だった2022年のことだ。女子体操界は2021年の東京五輪後、長らく日本女子を支えてきた村上茉愛さん(現女子強化本部長)ら五輪経験者が一気に現役を退き、宮田は「エース」と呼ばれるようになった。「これからは宮田が女子体操を引っ張っていかなければならない」という期待も大きく、それが重圧となってのしかかった。
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「思い返すと本当にそう(重圧)だったなと思います。私は普段から自分のためよりも、人のためにと思った方が頑張れるタイプ。団体戦がすごく好きだし得意でもあるので、それもあって、いろいろなものを背負っていたと思います」
ストレスの多い毎日に宮田はずっと苦しんでいたのだ。
「いろいろ溜め込んでしまうタイプなので…」
しかし、「自分が好きな体操をもう一度体感するために」という思いで全日本個人総合選手権に出ることを決めた。そして、予選では21位と大きく出遅れたものの決勝は7位まで巻き返すことに成功した。続くNHK杯は8位だったが、おおむね今の実力を出し切ることはできた。その結果、ユニバーシティゲームズ(7月16日開幕=ドイツ)の代表メンバー入りを果たした。
全日本選手権で感じたように、楽しもうと思ったことで重圧から解放されたのは心地良いことではあったが、時にプレッシャーがプラスの力になることも宮田は知っている。
「ユニバーシティゲームズもいろいろな先生方からの期待があるので、そこにうまく乗っていくつもりではあります。自分はいろいろ溜め込んでしまうタイプなので、気持ちをどうコントロールするかも考えていきたい。今後も自分のことを研究しつつ、メンタルや身体の状態を保ってうまく体操に向き合っていけたらいいなと思っています」
NHK杯3連覇や世界選手権で日本人トップの成績を出し続けながらも、どこか不安を抱えているようでもあった以前の彼女はいない。苦しみを乗り越え、自分の感情を受け入れながら一歩一歩進んでいこうとする強さが今の宮田にはある。《インタビュー第2回に続く》
(撮影=榎本麻美)

