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体操・杉原愛子が“史上初の快挙”のウラ側…ナゼ10年ぶりNHK杯優勝できた?「感謝の気持ちでいっぱいで…」杉原が見せた“予想を超える可能性”
posted2025/05/20 17:02

10年ぶりのNHK杯優勝を飾った杉原愛子
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矢内由美子Yumiko Yanai
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AFLO
体操女子の杉原愛子(TRyAS)が快挙だ。個人総合で争う体操NHK杯が5月16日から18日まで東京体育館で行われ、25歳の杉原が2015年以来、自身2度目となる優勝を飾った。10年の間が空いてのNHK杯タイトル獲得は男女を通じて史上初。2019年以来6年ぶりとなる世界選手権代表の座も射止める圧巻の演技に、会場から大きな拍手が降り注いだ。
最終種目のゆかを前に、首位を行く岸里奈(戸田市スポーツセンター)との差はわずか0.2点。着地ひとつで順位が入れ替わる可能性のある僅差だったが、杉原は自分の演技だけにフォーカスしていた。
表現した「杉原愛子の体操人生」
「ゆかの振り付けや曲を作る前にストーリーを作るところから入る」という杉原が今回のテーマとして設定したのは「杉原愛子の体操人生」だ。
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ジョージ・ガーシュウィンの名曲「ラプソディ・イン・ブルー」の曲に乗り、まずは15歳でNHK杯を初制覇した時に評判を呼んだ気品のある美しさを、冒頭の「水平2回ターン(D難度)」やF難度の大技「後方伸身2回宙返り」の空中姿勢で表現する。
続いては、ケガや体調不良に悩まされ、「不安や葛藤、悔しさ」を感じていた時期の感情を、ゆかを拳で叩く仕草と顔の表情で表現。すると、そこから曲調が一変する。
「演技をする時は一人。けれどもたくさんの人に支えられて体操をできていることに気づき始めてから、どんどん楽しくなった」
そんな思いを込めての後半は、「見ていて気持ちいいように」と、音楽に合わせて細かくコマ割りした振り付けで観衆を引きつけた。自身が考案したアイタードのデザインともマッチする躍動感があった。
終盤は「大好きな体操を自分も楽しみながら、観客の皆さんにも楽しんでもらいたい」との思いを手拍子を求める仕草に込めての演技。会場が最高潮に盛り上がる中、最後は「後方屈身2回宙返り(D難度)」の着地をピタリと止めた。