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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
ラグビー界に警鐘「このままでは日本代表は弱くなる」元代表SH田中史朗が提言する“W杯キャップ”の導入とは?「“ONE TEAM”とは何だったのか」
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/07/10 11:01
元ラグビー日本代表・田中史朗氏が疑問視するラグビーリーグワンのカテゴリー改正。日本代表の強化にも影響を及ぼしかねない、と危惧している
「できれば、僕としては日本のラグビーのために尽力してきた選手たちに報いたいと思うんです。そこで、『W杯キャップを獲得した選手については、A−1カテゴリとする』という一文を追加するのはどうでしょうか? これも不公平だという意見も出るでしょう。でも、国を代表してW杯の舞台に立ったことに対して報いられるし、これから日本代表に入りたい、日本のラグビーのために頑張りたいと思っている選手たちにも、この一文さえあれば、励みになると思うんですよ」
田中が危惧しているのは、今回のルール改正によって、将来の日本代表が弱体化するのではないかということだ。
「A−1のカテゴリを獲得するために30キャップが必要だとすると、いったい何年かかるのか? という話ですよ」
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2024年の日本代表のテストマッチは、夏と秋を合わせて11試合だった。今年、初めて日本代表キャップを得た選手がいたとして、カテゴリA−1の資格を得るためには、少なくともW杯イヤーである2027年まで待たなければならない。
「それも現実的じゃないと思います。すべてのテストマッチに出場するとなると、かなりハードです。リーグワンをフルに戦って、ケガをせずに、代表合宿にも参加する。実際、試合によってメンバーも変わるでしょうから、10試合に出るのはなかなか難しい。そもそも海外出身選手がその国の代表資格を得るには60カ月間、日本のチームだけに登録されていたことが必要で、さらに、カテゴリA−1の資格を得るには少なくとも、5年ほどは覚悟しなければならない。そうなると、日本で長くプレーするのは無理かも? と考えて、来日を諦めてしまう選手も出てくるんじゃないでしょうか?」
「ONE TEAM」のカルチャー
田中は2015年のW杯を機に、日本出身、海外出身の選手たちが一緒になって日本代表のカルチャーを作り上げてきた自負がある。
「現実問題として、日本出身の選手だけではティア1の国と渡り合うのは厳しいです。もちろん、日本出身の選手たちがリーグワンで活躍の場を広げるのは大切なことです。そのうえで、海外出身の選手たちと一緒になって、強い日本代表を作る。そのためにも、今回のカテゴリ分けではこれまでの功労者をリスペクトしつつ、W杯キャップの特例措置を設けて、未来のW杯で日本のために戦う意味を示せるんじゃないかと思います」
田中の思いは、あくまで日本代表の強化だ。2019年に「ONE TEAM」で示した日本ラグビーのカルチャーが曲がり角を迎えている。
〈全2回/前編から読む〉


