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「プロ志望表明したが…実際は?」東大エース・渡辺向輝の本音評「なぜ打たれない?」対戦したドラフト候補の証言…167cm“まるで芸術”フォーム
text by

柳川悠二Yuji Yanagawa
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/07/05 11:03
東京大学野球部エース・渡辺向輝(4年生)。プロ志望を表明した21歳の評価は?
本人の本音「頭で勝とう…で負けた」
投手として渡辺が特徴的なのは無論、その投球フォームだ。元プロ野球選手の父・俊介氏を完コピしたような地を這うサブマリン(下手投げ)で、芸術的ですらある。投球動作に入る前に捕手のサインをのぞき込む仕草もうり二つ。直球の球速は出ても120キロちょっと。それでも曲がり幅や角度、球速に変化をつけた七色の変化球で打者を翻弄する。
「縦横だけでなく、奥行き(緩急)にも変化をつけられるのが自分の武器だと思っています。基本的には遅くて曲がる、遅くて伸びる、速くて曲がる、速くて伸びる……4種のスライダーを投げ分けています」
渡辺は東大の投手として2年春から東京六大学リーグのマウンドに上がり、4年春までの通算戦績は1勝9敗。大学日本代表選考合宿に選出されることを渡辺は今後の野球人生の分水嶺としていて、候補に選ばれたことで今秋のドラフト会議を前にプロ志望届を提出する意向を明言した。
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だが、合宿への参加によって同じ土俵を目指す同世代との意識の差も痛感した。
「キャッチボールをしても見たことがないような、普段のキャッチボールでも捕ったことがないような球が当然のようにくるし、自分なりに勉強してきたつもりでしたが、自分がついていけないレベルで高度な話をしていたり……」
そしてこう締めくくった。
「東京大学では、いつも“頭で勝とう”という風に言って、野球に取り組んでいるんですけど、ここにいる選手たちのほうがぜんぜん頭が使えるし、野球に関しては頭がいいし、勝てないことばかりでした」
対戦した世代最強打者たちの証言
渡辺自身はそう謙遜し、最終的には代表の選にも漏れた。だが、合宿に参加した未来のプロ野球選手たちこそ、渡辺の特異性に驚愕し、その実力を評価し、可能性に言及するのだ。



