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ツバメのさえずり日誌BACK NUMBER
「ぶっ潰してやろう」ヤクルト小川泰弘が振り返る菅野智之・藤浪晋太郎を抑えての“最多勝・新人王”W獲り「1年目から“今年に賭けるしかない”と」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/27 17:00
新人王を獲得した2013年の小川の躍動感溢れる投球
ブルペンの1球からアピールと思っていた
「でも、それくらいの思いはありました。自分の真価を証明してやる、みたいな。プロに入ってから1つ1つ全て、ブルペンで投げる1球からアピールの場だと思っていましたし、対外試合は物凄く緊張しながらも、それこそ目の前のバッターをぶっ潰してやろうっていう思いでした。若い時の勢い、ギラギラした感じで投げていたのは覚えていますね」
このKIA戦での好投をきっかけに、小川はチャンスを手繰り寄せていく。続く阪神とのオープン戦で中継ぎ登板し2回を無安打無失点。3月6日、オリックスとのオープン戦で初先発の機会を得ると、5回2安打無失点と堂々のピッチングを見せ、開幕ローテーション候補に名乗りをあげたのだ。
「キャンプからエンジンがかかっていました。キャッチボールは石山さんとペアでやっていたんですけど、全力でバンバン投げていて伊藤(智仁)コーチに『シーズンは長いからそんなに飛ばすなよ』とよく言われたのを思い出します。そう周りに言われるくらい、全力を出し切っていたんだと思う。挑戦者という気持ちでやっていましたね」
体は小さくてもやれることを証明する
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現在では二つ名として定着している『ライアン投法』は、創価大3年時にノーラン・ライアン氏の著書を読んで身につけたものだ。左脚を高々と上げるダイナミックな投球フォームからキレのいいボールを投げ込み、大学時代は東京新大学リーグ通算36勝3敗、うち完封は23試合で防御率0.60という圧倒的な数字を残した。
しかし、それにもかかわらず、ドラフト前の評価は二分されていた。理由は1m71cmというプロ野球の投手としては小柄な体格だ。実は、当のヤクルトもスカウト会議で一度は身長を理由にリストから外していたが、担当スカウトが素材の良さを力説して指名にこぎつけたという経緯もあった。その選択が正しかったことを、小川は自身の奮闘で証明しようとしていた。
「体は小さいけれどやれるんだ、ってことを証明したいという思いが強かった。だから大学でやってきたことを全部出してぶつかって行こうと思っていました。プロ1年目でしたけど今年に賭けてやる、やるしかない、という思いでしたね」

