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「右腕を吊り、腫れた顔を隠して…」なぜ西田凌佑はそれでも会見に現れたのか? 中谷潤人と死闘の1日後…記者が見た“異例の敗者”のプライド
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/06/11 17:04
満身創痍の状態ながら、一夜明け会見で率直な思いを述べた西田凌佑
明言を避けた進退「もう少しがんばりたい気持ちも…」
さて、気になるのは今後だ。西田はこれまで「負けたら引退」を公言してきた。実直な性格の持ち主で、自分が口にした言葉に強い責任感を持っているのだろう。現時点で進退については明言を避けている。
それでも「悔しい思いだったり、応援してくれた人も増えたので、もう少しがんばりたいという気持ちも少しは出ています」と言うから、心境に変化があるのかもしれない。「今回は動けましたけど、もうリカバリーで回復しきれないと感じているので、やるとしても階級を上げたいと思ってます」と現役続行を見据えた発言も口にした。
枝川会長は「完璧に倒されたら辞めたとなるかもしれないけど、ちょっとようなってきてたときだったからね。悔いが残るんじゃないかなあと」と西田の心中を思いやり、次のように続けた。
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「本人が悔しいという気持ちになってるからね。けがが大丈夫ならやりたい気持ちになるんじゃないかな。ボクサーってそうやん。いつになるか分からないけど、スーパーバンタム級で一戦やって、その次に世界ができたらね。オレの考えだけどね」
西田のファイトは、陣営の心も動かした
西田に勝った中谷はクラスを上げ、来年5月にスーパーバンタム級4団体統一王者、井上と夢の日本人対決を行う流れになっている。枝川会長は「オレの勝手な理想」と前置きした上で、その試合の勝者に西田が挑戦するプランを思い描く。想定する相手はモンスターだ。その前にスーパーバンタム級世界ランカーとの試合を挟み、万全の態勢を整えるという。
西田のファイトは観客のハートを揺さぶっただけではなく、サポートする陣営の心にも強く訴えたようだ。枝川会長は西田本人の意向を第一としつつ「けがさえ大丈夫ならやらすべきだろうね」と自らに言い聞かせるように語った。

