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「テンシンはKOを狙わなくていいんだ」英国人記者が絶賛する那須川天心“最後の2ラウンド”「顔面に決めた鋭い左アッパーに目を奪われたよ」
text by

杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2025/06/10 11:06

ビクトル・サンティリャンに判定勝ちを収めた那須川天心
偉大なボクサーが常に必ずしも偉大なパンチャーだというわけではない。パーネル・ウィテカー(アメリカ)は歴史的なボクサーであり、ボディ、顔面にダメージを与えるだけのパワーを持っていたが、倒し屋ではなかった。キャリア初期のフロイド・メイウェザー(アメリカ)はパンチ力も備えていたが、最も名を売ったウェルター級時代はKO勝ちの少ないテクニシャンだった。
彼らと同様に、テンシンもハードパンチャーのような戦い方をするべきではない。テンシンはスピード、スキル、コンビネーションを武器にすでに3つの世界王座統括団体から2位以内にランクされ、近い将来に世界戦の舞台が巡ってくる位置にまで到達した。他のほぼすべてを備えているのであれば、KOパンチャーになろうとする必要はないというのが私の考え方だ。
グレイ記者が推薦する次戦の相手
今後、テンシンは遠くない内に世界戦の舞台に立つのだろう。個人的にはもう一戦を挟んでからでもいいのではないかとも思う。本気でタイトル奪取を目指すなら、その前にヒガ(比嘉大吾)、タクマ(井上拓真)といった元王者たちと前哨戦を行う意味は大きい。
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とはいえ、噂に上がっているWBO世界バンタム級タイトルを保持するタケイ(武居由樹)というライバルへの挑戦が実現し、そこで勝って私の考えが間違っていることを証明できるならそれは素晴らしいのだろう。
テンシンは現在の位置にまで正当な形で上がってきた。メイウェザーとのエキシビションでKO負けを喫し、世間から嘲笑されたのはそんなに昔のことではない。格闘技、キックボクシングの世界からボクシングに転向し、こうして表舞台に躍り出るまでの道のりは実に着実なものだった。基礎がしっかりしており、技術もあるため、タケイのような王者にも悪夢のような挑戦者になる可能性を確実に秘めている。