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日本代表vsインドネシア予想スタメン…「お前の考えも分かるが」“名波コーチに主張”鈴木唯人、佐野海舟の戦術眼がW杯メンバー争いを熱くする
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJanelle St Pierre/Getty Images
posted2025/06/10 06:02

オーストラリア戦に先発した佐野海舟。インドネシア戦でのスタメン出場はあるか
「ああいうプレーを効果的に、どんどん、作り出さないといけないなと思いました。相手を引きつけてスペースを開けるというパターンだけではない(意図的に作り出したチャンス)ものを、もうちょっと増やしてやれればいいかなと思います」
佐野の解説は、試合2日後に口にしたもの。ただ、佐野の話を聞いていて驚かされたのは、試合直後のことだった。
映像をじっくり分析していない時点から、同レベルのクオリティの分析をしていたことだ。引いた相手を崩せなかったオーストラリア戦直後、彼が挙げた以下の課題について、注意深く読んでみてほしい。
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「早く前につなげるというのが1番だと思います。あれだけ引かれている中で(前にボールを入れるのが)遅れてしまったら、やはり厳しいので。もっと、早く、前に、ボールを供給するというのが必要だったかなと思います」
この真意を読み解くと――。
引かれた相手から得点をとる場合、相手が守備ブロックを引いた中で〈どうやってその守備陣を崩すか〉を考えがちだ。しかし、佐野が思考をめぐらせるのはそこだけではない。回数こそ少ないかもしれないが、相手が前に出てきた時に、いかにして良い攻撃をするかに意識を向けている。
具体的にはこんなシーンが想定される。
マイボール時に相手がハイプレスに来た、もしくは日本が誘導したときに、素早くボールを前線に運ぶ。いわゆる「擬似カウンター」と呼ばれる攻撃だ。あるいは、相手ボール時に良い形でボールを奪って前線に送る。いわゆるカウンターからの攻撃である。
佐野はそういう形を想起しているのだろう。
「ブレイク」を狙う佐野の戦術眼は貴重なのでは
ここで着想するのは「再現性のある攻撃」というフレーズである。
三笘薫や冨安建洋がよく口にするものだが――球技のなかで、最も再現性のある攻撃が見られるのはバスケットボールである。この世界では攻撃は大まかに2つにわけて考えられている。
・セットオフェンス(相手が守備をセットした状態で仕掛ける)
・ブレイク(相手が守備をセットする前に素早く仕掛ける)
佐野が提唱したのは、後者の「ブレイク」を増やすことである。バスケでは攻撃が上手くいかないときにしばしばこんな反省が聞かれる。
「セットオフェンスに偏りすぎてしまい、ブレイクをあまり繰り出せなかった。それでは点を取るのは簡単ではない」
サッカーでもバスケのように「再現性のある攻撃」を志向してはいる。ただし競技の特性や歴史上、まだ攻撃について分析・思考する解像度が低い。それもあって日本では、セットオフェンスに目を向けがちだ。だからこそ、ブレイクについて意識を向ける佐野の戦術眼には意味はある。
オーストラリア戦は日本代表が今後考えないといけない課題は多々あった出たものの、2つの収穫もあった。
鈴木が見せた、攻撃的な選手としてチームに貢献するための思考法。そして、佐野の持つ戦術眼である。
森保監督はすでに来年の北中米W杯に向けての“コアメンバー”を想定しているが、その争いに割ってはいるだけのものを2人が見せたことを忘れてはいけない。
佐野は先発ボランチ予想、鈴木は?
さて、今回のW杯最終予選の最後の試合となるインドネシア戦では、町野修斗の1トップ、久保建英と中村敬斗の2シャドー起用などのフォーメーション図(※外部配信サイトでご覧の方は関連記事からご覧になれます)にあるとおり、佐野のスタメン出場と、鈴木のベンチスタートが予想される。この2人が、オーストラリア戦で得た反省を踏まえ、市立吹田サッカースタジアムでどのようなプレーで表現するのか。注目と期待は高まるばかりである。〈第1回からつづく〉

