プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「中川皓太・大勢・マルティネス」巨人連覇のカギを握る「勝利の方程式」“阿部監督版JFK”のキーマンとなる男とは?《セパ交流戦開幕》
text by

鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/06/03 17:00

巨人連覇のカギを握るリリーフ陣。(左から)中川皓太、大勢、ライデル・マルティネス
「7回か8回。(大勢には)ホールドのタイトルを取れと言った」
中川が復調してきたことで、この阿部監督の発言が現実味を帯びてくることになる。終盤を盤石にするという意味でも、マルティネス、大勢に中川という3人のリリーバーで7回から試合を支配する戦略が、巨人の今後を左右することになるはずだ。
3人のリリーバーで築く「勝利の方程式」
過去にも7回から3人の絶対リリーバーで勝利の方程式を築いた例はいくつかある。
ADVERTISEMENT
真っ先に頭に浮かぶのは阪神のJFKだ。第1次の岡田彰布監督時代の2005年シーズン。岡田監督は勝ち試合でジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之の3人のリリーバーを7回からセットで起用した。3人の起用法は基本的に久保田をクローザーに固定したが、ウィリアムスと藤川は相手打線の右、左に応じて臨機応変に7回と8回に振り分けたところがミソだった。この年の阪神は6回までにリードしていた試合で3人が登板すると勝率は9割越えを記録。JFKの存在感でしっかり勝利を手にしたチームは、2年ぶりのリーグ優勝を飾っている。
巨人でも12年からスコット・マシソン、山口鉄也、西村健太朗の3人が7回から勝利の方程式を形成して、チームの3連覇と12年の日本一の原動力となった。
この時は圧倒的な支配力のあった左腕の山口をセットアッパーに固定すべきという声もあった。しかし当時の原辰徳監督は「山口は相手打線の左が強いところに当てる。今は左の強打者、好打者が主軸のチームが多く、そこを抑えることが勝負のポイントになる。だからそういうユーティリティー的な起用が彼の持ち味を十二分に発揮させることになる」と語って相手打線の右、左によって山口とマシソンを7、8回に振り分けて起用し続けた。
勝利の方程式に左投手が一枚噛むことで、相手打線に応じた対応が可能になる。
そこがポイントなのである。
巨人版JFKの完成が連覇への武器
実際問題としても今季は対右打者の被打率2割3分8厘に対して対左打者が2割2分2厘と数字的には大きな違いはないが、基本的に大勢は左打者を苦手とする傾向がある。一方の中川は左打者が「背中から曲がってくる」と表現するスライダーを武器に左打者封じに自信を持ち、今季は新たにフォークも使い出して対右打者を含めて投球の幅は広がっている。
これまでの8回大勢、9回マルティネスというパターンに左の中川が加わることで、相手打線に応じて7回と8回の左右のマネジメントが可能になるのだ。阿部監督が開幕前に大勢の起用を「7回か8回」と語った背景にも、こうした過去の絶対的な勝ちパターンと重ねた部分があったからだろう。
接戦を凌ぎ切って勝ち切る。勝てる試合を確実に勝ち切っていく。それが今年の巨人の戦い方だとすれば、中川、大勢、マルティネス、或いは大勢、中川、マルティネスという勝利の方程式、“巨人版JFK”の完成は、連覇への最大の武器となるはずである。

