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「ライデル、キューバ国家公務員なの?」中日→巨人移籍後も防御率0.00、48Sペースと“亡命対策”の背景…元DeNAグリエルらも同様だった
posted2025/05/19 17:02

巨人でも圧巻のクロージングが続くライデル・マルティネス。彼のキャリアからはキューバ野球の現状も見えてくる
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama
このところ、東京ドームでの試合はホームランで決まることが多くなっているが、5月16日の巨人-中日戦も、ホームランの応酬が続いた。
4回裏:増田陸(巨人)ソロ
6回表:上林誠知(中日)ソロ
8回表:上林誠知(中日)ソロ
8回裏:吉川尚輝(巨人)3ラン
一塁側では、終盤の劇的な逆転劇に感涙にむせぶ巨人ファンが続出したが、最終回、ライデル・マルティネスの名前が告げられると、場内の空気が一変した。
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ライデルは、前年まで中日ドラゴンズの絶対的な守護神だった。しかし今季、4年49億円以上(推定)というNPB史上最高年俸で、巨人に移籍した。ライデルの凄さは、ほかならぬ中日ファンが一番よく知っている。
左翼からも右翼からも大きなため息が出たが、片方は絶望の、もう一方は安心のため息だったに違いない。
防御率0.00…なぜMLBとは縁もゆかりもないのか
果たしてライデルは、代打の宇佐見真吾を歩かせたものの17球で中日を退けた。翌日の同カードも最終回にマウンドに立ったライデルは、わずか4球で無失点に抑えた。これで開幕から18試合連続無失点。防御率0.00をキープしている。
28歳のライデル・マルティネスは外国人選手ながら、MLBとは縁もゆかりもない選手だ。彼のキャリアについて振り返ってみると、野球王国と言われたキューバの現況についても見えてくる。
2015年、18歳でキューバ国内リーグ(CNS)のピナー・デル・リオに。16年には15試合に投げて2勝2敗ながら防御率1.45の好成績を挙げる。チームメイトには現ソフトバンクのリバン・モイネロがいた。
亡命→MLBの流れ…グリエルらがNPBに派遣された
かつてはMLBへの人材供給源だったキューバだが、1959年フィデル・カストロによるキューバ革命によってアメリカとは国交を断絶。しかし国家元首に就任したカストロは大の野球好きで、キューバ国内リーグ(CNS)を創設。野球選手は「国家公務員」となってプレーした。そのレベルは極めて高く、キューバはアマチュア野球界で最強チームとして君臨するようになった。
しかし1991年のソ連崩壊以降、キューバは経済的に低迷。21世紀に入るとアメリカに亡命してメジャーリーガーになる選手が続出した。