「あんなダウンしたのに平気な顔で…」井上尚弥を“苦しめた敗者”カルデナスが語る8R死闘の真実「KOされたが楽しかった」 

――7回、あなたのボディ攻撃を受けた井上が一瞬、コーナーに下がるシーンもありました。あの場面でも手応えはあったのでしょうか？

RC　私のボディ攻めが効果的だった。イノウエは私があそこまで上手にボディを攻めるとは想定していなかったのだろう。私は無名の存在で、誰にも知られていなかった。イノウエと彼の陣営は、私の力量をある程度は認識していたとは思うが、ここまでやるとは考えていなかったんじゃないかと思う。

井上尚弥の猛攻を受けながらも、笑みを浮かべていたカルデナス（後方）　©︎Hiroaki Finito Yamaguchi

――同じ7回、井上の連打を受けたあなたはニュートラルコーナーでダウンを喫します。しかし、その回終了後、微笑んでいる姿が画面に捉えられました。ピンチに陥ったにもかかわらず、なぜ笑顔だったのでしょうか？

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RC　打ち合いを楽しんでいたからだ。ダウンはしたが、深刻なダメージがあったわけではなかった。効いたというより、疲労の蓄積。あまりにも激しいアクションだったために倒されてしまったが、一方で楽しかった。イノウエにも疲労はあった。ただ、彼はエナジーの管理が私よりも上手だった。私もベストを尽くしたが、イノウエの方がエナジーをうまく制御していた。さすがは4階級で世界王者になり、世界タイトルを25戦もこなしてきた選手だと言わざるを得ない。

――最終的には経験の違いも大きく響いたと感じているわけですね？

RC　それが敗因のすべてだったと言いたいわけではもちろんないが、重要な要素だったとは感じている。

©︎Mikey Williams/Top Rank

――実際に対戦して感じた井上の強さとはどういったところでしょう？

RC　休むことなくパンチを繰り出してくるところは本当にすごいと思った。優れたコンディションだからこそできることであり、第2ラウンドにダウンしたあとでも彼のその戦い方は変わらなかった。あんなダウンを喫したら、その時点で戦意を喪失してしまうか、打ち合いは避ける選手もたくさんいたはずだ。それでも平気な顔をして戦い続けたことがイノウエの多くを物語っている。陳腐な表現に聞こえるかもしれないが、イノウエはサムライ・スピリットを持っている。私もメキシカン・ウォリアーのスピリットを持っていて、2つのスピリットが重なりあったがゆえにビューティフルな試合になったんだ。

――8回に井上の連打を浴び、レフェリーが試合をストップした瞬間、あなたは不満そうな様子を見せました。改めてあのストップをどう振り返りますか？

〈つづき→後編〉