格闘技PRESSBACK NUMBER
「花のために祈る時間も、自分の時間も、奪われすぎた」木村花さんの逝去から5年…フジテレビと『テラスハウス』裁判を続ける母が伝えたい思い
text by

伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byL)Takuya Sugiyama、R)木村響子さん提供
posted2025/05/23 11:03
木村花さんが亡くなってから5年。現在も母・響子さんの闘いは続いている
響子さんがいま訴えたいこと
――子どもがSNSで出会ってしまうのは、危険に思われますが。
木村 私は「ダメ」とは言わずに、実際にSNSを通じて起こった事件を挙げるんですよ。それを知ったうえで、「あなたたちは何をチョイスしますか?」と考えてもらうと、感想文で返ってくるのは、「SNSは危ないから慎重に使いたいと思いました」と。「慎重に使わないといけないよ」なんてひとことも言ってないのに、そういう答えが返ってくるんですね。
――感想文を書くという、その動作がいいですね。いまの響子さんが訴えたいことはなんですか。
ADVERTISEMENT
木村 フジテレビ問題があって、いろんな被害に遭った人とつながることが多くなったんですけど、被害を受けた人って少ないんですね。誹謗中傷も、受けたことがある人とない人では、ない人のほうが多いんです。マイノリティーとマジョリティーの話になると、被害者に対する寄り添い、理解、優しさが世のなかに足りてないなと思うんです。権力を持った人の不祥事が、すごく多いじゃないですか。大きすぎる力を恐れるあまりに、一人ひとりが持った力に無自覚になっているけど、でも、その力でより良い優しい社会になればいいなぁと、変えていければいいなぁと思います。
「そんな母親だから、娘も頭がおかしいんだ」とか…
――響子さんのように、顔も実名も出して活動するのはリスクのほうが高いと思いますが。
木村 顔を出して、実名まで出している人間に対する誹謗中傷はひどくて、アンチグループに毎日叩かれていたときは、どこで誰に見られてるかわからないから、外出も怖くなってしまっていました。外に出てもずーっと下を向いて、携帯を見て。それでもね、髪の毛でバレちゃう。
――そのアフロヘアも、中傷の対象になるんですよね。
木村 「そんなTPOもわからない母親だから、娘も頭がおかしいんだ」とか、言われました。でもね、アフロにしなかったら、闘うっていう強い気持ちがなかったら、生きられないです。
去年かな、中学校に行ったんですね。生徒たちからのアンケートで、「SNSはなんのためにあるのか」という質問があって、みんなで考えて、1人の生徒が「世のなかをより良くするため」って答えてくれた。「じゃあ、より良くするためには何が必要かな」って聞いたら、日本語が母語じゃない生徒が何度も言い直しながら、「みんなが仲良くすること」だと。「じゃあ、仲良くするためには何が必要?」ってみんなで考えたら、1人の子が「愛とリスペクト」って言ってくれたんです。子どもたちがね、すごくシンプルで真理を突いてるんです。

