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「イシカワは英雄」「“死闘”を楽しんでいた」イタリア紙も絶賛…29歳石川祐希が日本男子バレー史上初“欧州CL制覇”「本当にうれしくて感動しています」
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弓削高志Takashi Yuge
photograph byHarun Ozalp/Anadolu via Getty Image
posted2025/05/21 11:08

チャンピオンズリーグでペルージャの初優勝に貢献した石川祐希(29歳)。日本人男子として初めて栄冠を手にした
日本男子の欧州バレー挑戦は四半世紀以上に及ぶ。
1998年にセリエA2(2部)サレルノでプレーした清水克彦に始まり、翌年にはやはりイタリアの1部パレルモで眞鍋政義(前女子日本代表監督)が続いた。
2002年には加藤陽一が当時欧州屈指の強豪だったトレヴィーゾに入団し、スクデット(セリエA優勝)を獲得。加藤は同シーズンのCEVカップでも優勝したが、翌シーズンに移籍したためCLは未出場に終わっている。2009年からは越川優が北イタリアのパドヴァで3季プレーした。
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近年、高橋藍や西田有志もイタリアに挑戦したが、彼らのクラブは欧州の頂点を狙うレベルにはなかった。
石川祐希はCLを制した初めての日本男子選手だっただけでなく、CL最多優勝回数を誇るイタリアから同大会に出場した初めての日本男子選手だったのだ。
「バレーボール選手としてもっと強くなる」
昨年の晩夏、失意のパリ五輪後、わずかな日本滞在期間を経てペルージャ入りした石川に話を聞きに行った。
新天地のホームアレーナ「パラ・バルトン」のトレーニングルームで、彼は穏やかな表情をしていた。
ここ数年カレンダーが過密すぎて休養が足りないのでは、と尋ねると、石川は複雑な微笑を浮かべつつ「(五輪で)結果が伴わなかったので……」とポツリと言った。
「休むよりは、しっかり体を動かして、そっちのほうがいいかなと思っているところですね」と続けた言葉に、わずかな時間でも立ち止まってしまうとあのイタリア戦の敗戦について考え込んでしまうと思っているのかもしれないと彼の内心を慮った。
石川は新しい環境やチームメイト、来るシーズンについて語り、形に残るタイトルの獲得とその原動力となるのが抱負ですと言葉を紡いだ。その後、「個人的には」と前置きして穏やかに語りかけてきた言葉が印象に残っている。
「バレーをもっともっと極めるというか、バレーボール選手としてもっと上手くなる、強くなる、成長するといった目標を今シーズンは掲げたいなと思っていて。トップのクラブに来て、いろいろなことが最初から揃っている。セリエAで2年連続優勝した(アンジェロ・ロレンツェッティ)監督から学べることもたくさんある。そこを含めて、バレーボールを極めつつ、楽しむというか……伝えるのが難しいですけど、無理に楽しむとかそういったことではなくて、極めていくうちに自然と今以上にバレーボールが楽しめるような、そういうシーズンを送りたいなと思っています」
あれから9カ月、新天地ペルージャでの1年目は波乱に満ちたシーズンだった。