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「ライデル、キューバ国家公務員なの?」中日→巨人移籍後も防御率0.00、48Sペースと“亡命対策”の背景…元DeNAグリエルらも同様だった 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2025/05/19 17:02

「ライデル、キューバ国家公務員なの?」中日→巨人移籍後も防御率0.00、48Sペースと“亡命対策”の背景…元DeNAグリエルらも同様だった<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

巨人でも圧巻のクロージングが続くライデル・マルティネス。彼のキャリアからはキューバ野球の現状も見えてくる

 中には球速170km/hで知られるアロルディス・チャップマン、打点王を獲得したホセ・アブレイユのようなスター選手も出た。しかし亡命選手はキューバ国籍を失うゆえに国際大会にキューバ代表で出場できない。人材流出に悩んだキューバ当局は、アメリカ以外の国への野球選手の派遣を認めることとした。

 この流れを受けて2015年2月、DeNAに入団したのはユリエスキ・グリエル、ルルデス・グリエル・ジュニア兄弟。以後、NPB各球団にキューバ国内リーグから選手が派遣されるようになった。

 なお、これらの選手は、あくまでキューバ国内リーグに所属する国家公務員の身分のまま派遣されており、年俸の一部がキューバ政府側に支払われている。また国際大会があるときには、これらの派遣選手は招集されれば「キューバ代表」としてプレーすることが義務付けられている。

ライデルは大成功、一方でグリエルやジェリエルは…

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 そんな背景がある中で、ライデルは2017年2月、中日に入団した。身分は育成選手だった。ちなみに中日には、同じキューバ出身のダヤン・ビシエドもいたが、ビシエドはアメリカに亡命し、メジャーリーガーとなってから中日に移籍。ライデルや強打の捕手として2018年に加入したアリエル・マルティネス(現日本ハム)とは立場が違っていた。

 1年目はウエスタン・リーグで1勝2敗、防御率5.96と結果を出せなかったが、2年目の2018年は10試合で2勝2敗、防御率0.55と急成長し、支配下登録されて4月19日に一軍デビューした。

 2019年からは救援投手として活躍。当初目立った制球難が改善されると2022、24年と最多セーブを記録するなど、キューバから派遣された選手としては最も成功した一人になっている。

 なおライデル、アリエルの両マルティネスの成功を受けて、中日は2020年にCNSから救援投手のジャリエル・ロドリゲスの派遣を受けた。しかしジャリエルは2023年のWBCに出場した後アメリカに亡命。NPBに派遣されてからも、前述のグリエル兄弟をはじめアメリカに亡命する選手がいる。

球数少なくすでに14S…史上最多セーブペース

 ライデルの持ち味は、155km/h超の速球に高速スライダー、カーブ、スプリット。イニング数を大きく上回る三振を奪い、制球力は優秀で、投手の優秀さを示すWHIP(1イニング当たり被安打、与四球で出した走者の数)は、1を割り込んでいる。

 さらにライデルは今季登板した18試合の総投球数は247、1イニング当たり14球と、救援投手としては少ない球数で試合を締めている。つまりストライク先行の投球が続いているのだ。

【次ページ】 球数少なくすでに14S…史上最多セーブペース

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