「野村克也監督がマウンドに走ってきた！」“どえらい状況”に大焦り…“vsイチロー”シリーズで快投！ ヤクルト山部太「最高の1年」秘話 

イチローのオリックスと日本シリーズで激突

　山部の快進撃には続きがあった。

　野村IDと仰木マジック、どちらに軍配が上がるのか——。1995年の日本シリーズは、戦前から大いに盛り上がっていた。「がんばろうKOBE」を合言葉にパ・リーグを優勝したオリックスが相手。2年連続のMVPとなるイチローは、首位打者、打点王、盗塁王など「五冠」に輝くシーズンだった。

95年のイチローは打率.342、25本塁打、80打点、49盗塁。あとホームラン3本で三冠王という凄まじい成績だった　©Naoya Sanuki

　山部はオールスターでもイチローと対戦しているが、フリーバッティングを生で見て衝撃を受けたという。

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「もの凄い選手だって分かってはいましたけど、あの華奢な体でグリーンスタジアム神戸の上段に、ボンボンと放り込んでいくのでもうびっくりで（笑）。僕だけじゃなくて全員で見ていたんで、みんなそうだったと思いますよ」

　グリーンスタジアムでの第1戦を5-2で制したヤクルトは石井を先発マウンドに送った第2戦、2点をリードされたものの8回表に土橋勝征、オマリーの連続タイムリーで追いつく。そしてこのシリーズで中継ぎを託される山部がマウンドにのぼる。1点もやれない状況で先頭打者の福良淳一に三塁打を打たれ、いきなり大ピンチに陥った。

95年日本シリーズ第2戦にリリーフで登板した山部　©Kazuaki Nishiyama

野村監督がマウンドに走ってきた！

「ライトフライかなと思ったら真中（満）がそらして、三塁打になっちゃって。これは困ったなって思ったんですよ」

　その大ピンチに、野村克也監督がベンチから小走りでマウンドにやってきたのだ。

「野村監督が走ってマウンドにやってくるなんて見たことがないから、それくらいどえらい状況なんだって思った記憶がありますね。僕、もうそれだけで焦っちゃって、監督が何か言ってくれているんですけど、まったく耳に入ってこない（笑）。試合後にも記者さんに何を言われたか聞かれたんですけど、『覚えていません』って答えたはずです。

　でもね、そのマウンドで監督、笑顔だったんですよ。なんかそれで凄く安心できたというか、リラックスできたというか。あの光景は今でも目に浮かびます。現役生活のなかで一番の思い出のシーンですね」

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