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朝倉未来が“両者流血のTKO勝利”で見せた必死さ…『RIZIN男祭り』鈴木千裕戦直後の「全然楽しくないですよ」発言、3連敗からの復活劇はなぜ生まれたか? 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2025/05/05 17:06

朝倉未来が“両者流血のTKO勝利”で見せた必死さ…『RIZIN男祭り』鈴木千裕戦直後の「全然楽しくないですよ」発言、3連敗からの復活劇はなぜ生まれたか?<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

5月4日のRIZIN男祭りで対戦した朝倉未来と鈴木千裕

朝倉はなぜ鈴木の攻撃を封じられたか?

 しかし、だ。試合が始まると、朝倉は暴風雨を見事に鎮めてみせた。タックルでテイクダウンに成功するとコーナーに鈴木の頭を押し込んで動きを封じる。しっかり抑え込むと上からパンチ。試合をコントロールしていった。

 鈴木を抑え込んで動かさない。そんな展開だから、言ってしまえば地味だ。だが、満員の観客はその地味さにも意味を感じたはず。戦前、試合を楽しみたいと言っていたがそれができたかと聞かれ、インタビュースペースでの朝倉はこう答えている。

「全然楽しくないですよ。あんな(パンチを)ブンブン振り回してきて危ないじゃないですか。必死ですよ」

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 泥臭くてもいいから絶対に勝つ。そう決めていたと朝倉。嬉しいというより「ホッとしてます」とも。鈴木をグラウンドから立たせたら暴風雨が始まる。地味でも何でも抑え込み続けなくては。なりふり構わない必死さが、どんな派手な攻撃よりも心に響く。そういう試合もあるのだ。

 しかも現代のMMAでは、選手はオールラウンダーであることが基本だ。ストライカーこそ寝技を回避するためテイクダウンディフェンスに秀でる必要がある。ストライカーだからタックルに弱い、では勝てないのだ。

両者流血の壮絶な打ち合い

 テイクダウンに成功するには、打撃で勝負する姿勢を見せる必要がある。鈴木の連打にしっかり打撃で対抗したからこそ、タックルからの“地味な展開”も可能になった。所属するJAPAN TOP TEAMは弟の朝倉海をはじめテイクダウンディフェンスが強い選手が多く、その中での練習で「思った以上にテイクダウンが成長してました」と朝倉。

 最終3ラウンド、逆転を期して前進してくる鈴木には的確なカウンター。臆することなく打ち返し、テンカオ(カウンターのヒザ)からの左フックをヒットさせる。鈴木の攻撃で口の中を切った朝倉だが、逆に左目の上をカットさせた。ドクターチェックの結果、鈴木の続行不能で試合終了。朝倉のTKO勝利だ。

 グラウンドでのトップキープ主体の地味な攻防と、フィニッシュにつながった両者出血の打ち合い。どちらも朝倉未来の武器であり、復活を印象づけるものとなった。

【次ページ】 朝倉未来「逃げたことないんで」

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