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「アピール用の練習はいらない」「監督に年賀状も不要」元ヤクルト監督・真中満が“合理的マネジメント”で優勝も「負けるより苦しかった」こと 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/05/07 11:03

「アピール用の練習はいらない」「監督に年賀状も不要」元ヤクルト監督・真中満が“合理的マネジメント”で優勝も「負けるより苦しかった」こと<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2015年に監督に就任すると、2年連続最下位だったスワローズをいきなり優勝に導いた真中満氏の“合理的マネジメント”とは?

「高校生、大学生ならば教育の側面もあるので頑張っている子を起用するというのも、チームの士気を高める意味があるかもしれません。でもプロは練習しようがしまいが結果が全て。たくさん練習したから試合に出られるなんて甘いんです。

 それに休みの日に神宮球場で5時間練習している選手がいたとして、別の場所で一人色々なトレーニングをしている選手だっている。たまたま僕の目に見えた努力だけで評価していたら、上にアピールするのが上手い選手ばかり得をして、アピールは苦手だけど能力がある選手を評価できなくなってしまいますよね」

監督と選手の間には一線を引く

 実際には明るく人付き合いが好きな真中氏だが、監督時代は選手とあえて距離を置いた。就任直後のオフシーズン前には、「僕に年賀状を送らなくていい」と選手やスタッフに「虚礼廃止」を宣言したほどだった。

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「本当は楽しく過ごすのが好きなんだけどね。監督になった時、そこは僕なりに一線を引こうと決めましたね。これは野村(克也)さんも言っていたけれど、監督をしている時は選手の披露宴にも出たくないんです。

 選手の奥さんやご両親と会って結婚式でスピーチをしたら、試合に出してあげたいという気持ちが湧いてくるでしょう。その選手にとっては良くても、それは他の選手が試合に出られなくなることでもある。選手は監督の起用法で給料が決まるようなところもあるのだから、そこは絶対に惑わされてはダメだと思うんです」

合理的なマネジメントが次第に効を奏す

 実は10年後の令和のムードを先取りしていたかもしれない合理的なチームマネジメントは、ヤクルトに大きな変化をもたらした。監督就任1年目の15年、チームはスタートダッシュに失敗し、5月には9連敗を喫して最下位に転落。最大で借金6を背負ったが、夏場からじりじりと順位を上げて上位に食い込んでいった。

 采配にも“真中流”が生きた。攻撃面では脂が乗っていた畠山和洋や川端慎吾に加え、大ブレークした山田哲人や雄平といった強打者を上位に並べ、一気呵成に点を奪った。2番に強打者を据えたのも、当時は先駆けの戦法だった。

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