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「立浪和義の同期」じつは“もうひとりいた”中日の高卒スーパールーキー「あの伊良部秀輝より速かった剛速球」「不敗神話で優勝に貢献」上原晃の伝説 

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松永多佳倫

松永多佳倫Takarin Matsunaga

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photograph bySankei Shimbun

posted2025/05/04 11:04

「立浪和義の同期」じつは“もうひとりいた”中日の高卒スーパールーキー「あの伊良部秀輝より速かった剛速球」「不敗神話で優勝に貢献」上原晃の伝説<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

プロ1年目、当時19歳の上原晃。全身を大きく使った豪快なフォームで快速球を投げ込んだ

 同期の立浪がオープン戦に出場しているのを横目に見ながら、上原はキャンプの遅れを取り戻すかのようにナゴヤ球場で下半身を徹底的に鍛え直す。立浪はオープン戦の活躍もあって、セ・リーグでは巨人の王貞治以来29年ぶりの快挙となる高卒新人の開幕スタメン出場を果たした。投手と野手の違いはあれど、同期の立浪はエリート街道まっしぐらで、上原にとって常に気になる存在となる。

圧巻の一軍デビュー、「登板試合で連戦連勝」不敗神話も

 二軍スタートとなった上原だが、首脳陣の期待通り順調に伸びていった。前半戦のウエスタン・リーグでは無傷の7連勝を飾り、防御率1.81。高校を卒業して3カ月で二軍のエース格となる。そしてプロ入り後、初めて全国にアピールする場が訪れる。

 7月22日のジュニアオールスターゲーム(現フレッシュオールスターゲーム)。1対0でウエスタンがリードする8回、上原がマウンドに上がる。いきなり148kmのストレートを投げ込むと、5万人を超える東京ドームの観客が沸いた。やがて「150」を期待するコールがドーム内にこだまする。当時は150kmのスピードボールなどめったに出ない時代だった。イースタンで投げた同級生の伊良部は最速147km。スピードでは上原に軍配があがり、無失点でセーブも記録した。若さが弾けた瞬間だった。

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 ウエスタン・リーグで7連勝を含む8勝1敗、フレッシュオールスターでも活躍したことで、中日首脳陣は一軍入りを検討する。監督の星野も「まずは練習を見てからだ」と色気を出すようになり、テストとして一軍主力を相手にシートバッティングで投げさせた。そこでも抑えた上原は、ジュニアオールスター明けからついに一軍ベンチ入りとなる。

 甲子園同様、上原はプロでも鮮烈なデビューを果たした。

 1988年7月30日のヤクルト戦で一軍初登板し、威力のあるストレートで7、8回を零封。19歳の勢いでプロ初陣を飾った。翌朝の新聞には「沖縄の星」という見出しが躍る。

 その後、上原が登板した試合で中日は9連勝。高卒ルーキーの不敗神話にファンは胸を躍らせた。まだセットアッパーという言葉がない時代。「1年目は僅差の場面で投げて流れを変える、というのが星野さんの戦略だったと思う」と本人が回顧するように、上原が7、8回を投げて、抑えの郭源治が試合を締め括る「ダブルストッパー」という必勝パターンが確立された。

【次ページ】 立浪と上原…優勝に貢献した“ふたりの高卒ルーキー”

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