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「電撃移籍」スターダムの“アイコン”だった岩谷麻優は、なぜマリーゴールドへ移ったのか? 入団会見で記者が見た“親子”のような関係性
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/05/08 17:03
朱里とのIWGP女子王座戦がスターダムでのラストマッチとなった岩谷麻優
“中2日”でのマリーゴールド入団
昨年は自伝が『家出レスラー』というタイトルで映画化されている。現社長の岡田は、映画のプロジェクトからスターダムに関わり始めたこともあり、岩谷の退団を「家出」なのだと一夜明け会見の壇上で説明した。
「最終的な落とし所としては“じゃあ、一度家出をしたらいいんじゃないか”と。家出をしてそのまま独り立ちして成長するもよし、あまり言うことではないかもしれませんが“寂しくなったら帰っておいで”という気持ちもあります」
これからは“スターダムのアイコン”から“女子プロレスのアイコン”になります。家出してきます。そう言って岩谷は退団会見を終えた。しかし“家出”は“里帰り”になった。恩人であるロッシー小川が代表を務めるマリーゴールド入団だ。
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プロレスラーになりたいという想いだけで家を飛び出してきた上京当初、岩谷は小川の家に居候している。自他ともに認める“ポンコツ”で、小川に洗濯までしてもらっていたそうだ。マリーゴールドは新しい団体だが、岩谷にとっては“親がいる場所”ということになる。
5月1日の入団会見であらためて確認したのだが、正式な入団交渉は28日のスターダム退団が決まってから。「引き抜きではないです」と岩谷は苦笑していた。小川は退団後の交渉かと確認されて「そう(いうことに)しといたほうがいいんじゃないですか」と言ったものだから、一部ファンの怒りを買うことになった。入団自体はスターダムとの契約が切れた後でも、事前交渉の事実があれば問題になる。昨年2月、小川がスターダムを契約解除になったのもそれが理由だった。
小川にしてみれば、嬉しさのあまりはしゃいでしまい、余計なことを言ってしまったというところだろう。昭和の感覚と言ってもいい。小川には、タイミングがどうであれ娘が実家に帰ってくるのが大事だったし、それは必然だった。
「マリーゴールドを設立する時に(岩谷に)設立メンバーでいてほしいというのがありまして。1年かかりましたけど、それが実現したということです。私の中では前からいるメンバーという認識です」
フリーで活動する選択肢もあった
退団会見の時点では、岩谷は先のことは考えていなかったという。フリーとして活動する気持ちもあり、オファーを待っているが連絡先はどうすればいいだろうかというレベル。「Xのリプライで公開オファーにしてもらいましょうか」なんて冗談も言っていた。ただ退団の挨拶を小川にしたことで、一気に“里帰り”に気持ちが傾いたようだ。海外進出という噂も出ていたし、いずれそうしたいという思いもある。だが今ではなかった。その理由も岩谷らしい。
「犬2匹と猫3匹を飼ってるので海外は……。日本が大好きで家が大好き、犬と猫と離れたくないので。(フリーとしての参戦オファーもあったが)自分でスケジュール組んだりギャラの交渉とか大変なので」
2019年、スターダムがブシロード傘下になった際には「海外の団体に行かなくても、日本で世界的に有名になれる」と喜んでいた。スターダムで岩谷と“3人娘”、“スリーダム”と呼ばれたイヨ・スカイ(紫雷イオ)、カイリ・セイン(宝城カイリ)は現在、世界最大の団体WWEに所属。昨年はマリーゴールドからジュリアが移籍し、団体間の交流がある。昨年7月の両国国技館大会にはイヨが特別参戦して話題になった。
岩谷がマリーゴールドに入ったことで、今後のビッグマッチで3人娘が再会、あるいは対戦する可能性もあるという。岩谷もマリーゴールド入りの決め手の一部に、イヨやカイリ、ジュリアと組んだり闘ったりしたいという思いがあったそうだ。

