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プロ野球PRESSBACK NUMBER
新庄剛志監督の奇策に「マジやん…」日本ハム“恐怖の9番”水野達稀が驚かなかったワケ…純度100%の新庄野球「そういえばボスもいい匂いしますよね」
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/20 17:01
昨季5月にプロ初本塁打を放った日本ハムの水野逹稀。今季はショートのレギュラーにして“恐怖の9番”としてチームの首位快走に貢献
24年8月14日のマリーンズ戦。2回無死二、三塁で伏見寅威が初球スクイズのサインを鮮やかに決め、1点を加えた。なおも1死三塁で、水野に打席が回ってきた。
また初球だった。水野はC.C.メルセデスが投じた球を小気味よく投手前に転がす。
2者連続の初球スクイズを成功させたのである。
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水野はサインが出たとき、こんなことを考えていた。
「驚きはしなかったんです。準備をしていたわけではなかったですが『もしかしたら……』ぐらいに思っていたのが、サインが出て『マジやん』みたいな気持ちになりました」
奇策にも意表を突かれることなく、堂々と演じきった。
笛吹けば兵は踊る。選手が監督の思惑を理解し、忠実に遂行した好例と言っていい。
水野は昨季、自己最多の105試合に出場した。打率こそ.220だったが、73安打を放ち、ホームラン7発と持ち前のパンチ力を見せつけていた。それでも、自己評価は厳しい。
「できなかったことが多すぎました。好不調の波が激しくて……。いいスタートを切っても途中で20打席ノーヒットとか。フラットな時があまりありませんでした。その分、まだ伸びしろがあるのかなと思っています。波が安定すれば、もうちょっと打率も残るのかなと考えています」
水野は打撃だけでなく、ショートの守備も課題にしていた。
指揮官はそのことをわかっていたのだろう。だから、この1年間、SNSや会話を通して背中を押していた。
5月30日の阪神タイガース戦。水野の攻守にわたる活躍で完勝すると、新庄はインスタグラムにこう投稿した。
《今のチームがこの位置にいるのは本当に「水野君の守備 ダメ押しのタイムリーをいつも打ってくれる活躍には感謝しかない」 彼は負けず嫌いで負けん気が強く いつも笑顔がなく怖い顔してますが優しい子です》
「エラーで人生を終える選手はいない」
失敗も咎めない。6月9日の東京ヤクルトスワローズ戦では両チーム無得点の8回、ホセ・オスナの飛球を捕れず、失策を犯した。残った走者が決勝のホームを踏み、チームは敗れた。試合後、悔しさが消えない水野はスマートフォンを見ていると、ある記事が目に留まった。
新庄の談話が出ていたのだ。

