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プロ野球PRESSBACK NUMBER
新庄剛志監督の奇策に「マジやん…」日本ハム“恐怖の9番”水野達稀が驚かなかったワケ…純度100%の新庄野球「そういえばボスもいい匂いしますよね」
posted2025/05/20 17:01
昨季5月にプロ初本塁打を放った日本ハムの水野逹稀。今季はショートのレギュラーにして“恐怖の9番”としてチームの首位快走に貢献
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
JIJI PRESS
新庄監督から驚きの開幕スタメン通達
本番までまだ3週間もある。水野達稀は2024年の春、あまりにも早いタイミングで新庄剛志監督から開幕スタメンを通達されて面食らった。だが、その分だけ、腰を据えて準備できた。
「早めに開幕戦でいくと言っていただいたことで取り組みが変わりました。すごいプレッシャーはありましたし、自分勝手なヘタなプレーはできないという危機感もありました。でも、開幕スタメンだとわかっていたので、オープン戦で少々打てなくても切り替えができたのも確かでした」
水野にとって開幕スタメンは初めてではない。
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新人だった22年、つまり新庄監督の初陣だった2年前の3月25日の福岡ソフトバンクホークス戦でも「9番ショート」で先発していた。だが、三振とゴロアウト2つとまったくいいところがなかった。次の日も2打席凡退すると代打を送られ、3戦目にはスタメンから姿を消した。
プロのスタートで躓いた悪夢を水野は憶えていた。
だが、これまでの2年間の歩みが彼自身を変えた。
「新人だったときほど、オドオドしませんでした」
逞しくなった3年目の水野は開幕カードでの活躍を勢いに変え、5月15日の埼玉西武ライオンズ戦ではエスコンフィールドの右中間に待望のプロ初本塁打を叩き込んだ。
長いシーズンでの成長ぶりを示したのが10月のクライマックスシリーズ第1ステージの千葉ロッテマリーンズ戦である。負ければ敗退の第3戦は同点のまま7回に入り、2死一、二塁で打席が巡ってきた。種市篤暉の速球を強振すると右中間を破り、2点を勝ち越すタイムリー三塁打になった。第1ステージ突破に大きく前進する殊勲の一打だった。
水野が新庄から受けた打撃のアドバイスはそう多くはないという。
ただヒットが出ない時はどうしてもボールを見極めようとして受け身になってしまう。
そんな時に、こう声をかけられた。
「タイミングを早く取れ。早めに取って引っ張りのファウルを打つぐらいの気持ちで。前で打て」
打撃のミートポイントについて考えたい。前でさばくか、ボールを引き込んで軸回転のなかでとらえるかに大別するなら、新庄の持論は前者だという。確かに、現役時代の豪快なスイングを見れば頷ける。水野もまた力強く引っ張って右翼上空に大飛球を放つイメージが強い。新庄の助言も生かしながら、打撃を磨いていった。
水野は新庄のことを「ボスは……」と呼ぶ。ごく自然な形で、さらりと言うのは、同じ22年にファイターズのユニフォームを着た“同期”であることも無縁ではないだろう。
2者連続のスクイズ奇策に「マジやん」
水野にとってプロに入って初めての監督が新庄である。この3年間、その考え方に触れ、戦術に驚かされてきた。いわば、純度100%の「新庄野球」のなかに身を浸してきた選手のひとりである。それだけにその理解度は日を追うごとに深まっていった。
象徴的な試合がある。

