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「ドラフト1位なら考えますよ」PL学園・清原和博を外した阪神が指名した“強気な高校生”…巨人キラー遠山奬志がスーパールーキーだった頃
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO,NumberWeb
posted2025/04/30 17:01

巨人戦の思い出を振り返った遠山奨志(57歳)。この春から京都廣學館野球部のコーチを務めている
恐る恐る校長室の扉を開けると、大勢の報道陣が待ち構えていた。そこで初めて、阪神からの1位指名を聞かされた。阪神は予告通り清原を1位指名したが、6球団が競合して抽選の末逃し、外れ1位で遠山を指名したのだ。
「『うわぁ、えらいことになってもうた』と思いましたよ。嫌でしたよ。まったく頭になかったことやから。それまで熊本から出たこともなかったんで、『大阪? どこやねん』って感じで。そらもうブルーでしたわ。社会人野球の相手さんにも申し訳ないし」
しかし「1位だったら」と言った手前、もう断る道はない。入社が決まっていた社会人チームに断りの連絡を入れ、プロ野球人生が始まった。
「おー!山本浩二さんや!」
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無欲だったことが功を奏したのか、高校を卒業したばかりの遠山は、プロの大海原へスイスイと漕ぎ出した。
4月27日の中日戦で一軍デビューを果たすと、5月1日のヤクルト戦で初先発。5月14日の広島戦では初完投で初勝利を飾った。
「何も考えてなかったですよ。それまでテレビで観ていた人とやるわけだから。『おー!山本浩二さんや!』という感じ。『すごいな。この人たちと同じ場所でやっとるわ』と野球ファンのような感覚だったから、よかったんじゃないですかね」
そんな中、唯一プレッシャーを感じていたのが巨人戦だった。