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「ドラフト1位なら考えますよ」PL学園・清原和博を外した阪神が指名した“強気な高校生”…巨人キラー遠山奬志がスーパールーキーだった頃
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO,NumberWeb
posted2025/04/30 17:01

巨人戦の思い出を振り返った遠山奨志(57歳)。この春から京都廣學館野球部のコーチを務めている
阪神-巨人戦と言えば“伝統の一戦”。ファンは熱狂し、ヤジはいつも以上に尖る。球団の力の入れ具合も明らかに違って、巨人戦で活躍した選手には賞金が出るというニンジンもぶら下げられていた。
だがプロ1年目の遠山がその重みを理解していたわけではない。
巨人戦で先発した際、気になったのは時間だった。巨人戦だけは地元の熊本で中継される。ただし、ナイター試合の中継は午後7時からだった。
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「この“7時”っちゅうのが、クセモノなんですよ。試合は6時からですから、先発しても3イニングは放らないと映らないわけです。それまでにノックアウトされたら、『あれ? お前、今日先発じゃなかったの?』って言われるじゃないですか(笑)。それがものすごくプレッシャーだったんですよ。
頭の中にそれしかないから、試合中に時計をちらちら見て、『おー、もうちょっとやな』と。他の試合は映らないんで、巨人戦だけそういう意味での変な意識はありました。今はもう6時からバンッと(中継が)始まるんで、ええなーと思いますよ」
桑田真澄を上回るプロ1年目の成績
この年、遠山は巨人戦3試合に登板し勝ち星も挙げたが、“巨人キラー”として名を馳せるのは、まだまだ先のこと。
1年目は最終的に27試合に登板し、8勝5敗、防御率4.22でチームの勝ち頭となった。同年にドラフト1位で巨人に入団した同学年の桑田真澄が、1年目は15試合登板2勝1敗、防御率5.14だったことを見ても、遠山の1年目は出色の出来だった。
だが2年目以降、プロの荒波に飲み込まれることになる。