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名人・藤井聡太でも羽生善治会長でもなく…「名人戦第1局前夜祭、敗戦直後の感想戦も」挑戦者・永瀬拓矢の“素敵な笑顔”に最も胸キュンした
posted2025/04/29 11:05

藤井聡太名人と永瀬拓矢九段が対局している名人戦。観る将マンガ家が注目の第1局を現場で取材した
text by

千田純生JUNSEI CHIDA
photograph by
日本将棋連盟
2年ぶりの名人戦取材…「い、いきなり羽生会長」
「2年ぶりに名人戦、椿山荘へ取材しに行きませんか?」
毎月恒例の「将棋ハイライト」イラストが配信された3月末のこと。編集担当さんからLINEが。1年に何回か、将棋イベントや対局などの現場を実際に目の当たりにできる機会に恵まれているわけですが——江戸時代から脈々と続く「名人位」を争う現場へと足を運ぶことになりました。
2年前の名人戦は渡辺明名人(段位・称号は当時)に対して、藤井聡太六冠が挑む構図。初めて訪れる名人戦の緊迫感に心臓バックバクで取材した興奮のままイラストを描いたのがいまだに記憶に残っています。今回も同じく緊張したし、観る将の妻氏には「また貴方だけ椿山荘! ずるい!!」と言われて出発したんですが(笑)。
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まず訪れたのは対局開始前日の4月8日に行なわれた、前夜祭です。
「うわー2年前も思ったけど、入口から優美で豪華」
「っていうか、もう鯉のぼり出てません!? それもいっぱい! いち早くゴールデンウィーク気分!」
と、おのぼりさん気分で浮ついて編集担当さんとエントランスに入るや否や。「すみませんー」とエレベーターから出てきたのは、知性あふれるスーツ姿の紳士。
「は、羽生善治先生……」
前夜祭前から様々な関係者に対して挨拶、会話に応じるなど多忙に見えるにもかかわらず、終始にこやかな笑みを浮かべて会長職をこなしていました。もう取材は始まってるんだから礼儀をちゃんとしなければ……と“初手”から心改める次第に。
藤井名人も永瀬九段も…品格がある
客の1人や取材者として竜王戦、王将戦などタイトル戦の前夜祭に足を運んだことがありますが、いつも思うことがあります。
「か、格調高い」
こういった心境になれるのは「前夜祭」というイベントがある将棋ならでは——とも思います。その中でも椿山荘のボールルームは、より一層の特別さを感じるものでした。
そうこうしていると、前夜祭開始時刻の18時に。
ボールルームの入り口には、入場を待つ対局者の姿がありました。入り口のドアを真っすぐに見つめる藤井名人、その数メートル後方には目をつむって待つ永瀬拓矢九段。その2人に対して会場内外の誰もが敬意のまなざしを向けていました。
ほどなく司会の方から声がかかり、両者入場。