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カタールW杯PK戦で日本が使ってはいけなかった“あるもの”…森保ジャパンが知っておくべき「なぜ超一流選手がPKを外すのか」のプレッシャー心理学
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2025/04/26 11:06

カタール大会クロアチア戦、PK戦で南野拓実はPKを阻まれる。そこに至るまでには意外だが重大なチームの「ミス」がいくつかあった
負けたチームで使っていることが確認できる道具は、キッカーを記した紙(スペインのルイス・エンリケ監督、オランダのフックコーチ、フランスのステファンコーチ)と、選手名の横に数字を書き足してPKキッカーを示したリスト(ブラジルのシャビエルコーチ)、そして対戦相手のキッカーとGKのデータを示したタブレット(日本)だ。
しかし、紙やタブレットを示せば、少なくとも一部の選手の注意がどうしてもそちらに向くから、話し手とアイコンタクトを取り、絆を育む機会が減る。逆に勝った側は、スタッフと選手がまっすぐ見つめ合い、ジェスチャーやボディータッチといった言葉以外の手段も使ってメッセージを補強していた。紙やタブレットはどこにも見当たらなかった。》
道具を使うことの代償
日本のキッカーたちは当然ながらタブレットの画面を見つめて確認していた。ブラジルの選手たちも同じように、コーチのノートに集まった。チアゴ・シウバのように、ノートを1分以上見つめている選手もいたという。そこに人が集まっているので、他の選手も集まってきて、大半の選手がノートを確認しようとすることに時間を費やしてしまった。
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PK戦前の貴重な数分間のうち、絆を強めたり、選手とやり取りしたりといった有益な活動に使えたはずの時間が失われたのだ。ヨルデット氏は、「指導者がメモやタブレットを手にしていたら、必ずPK戦に負けると言いたいわけではないが、道具を使うことには代償が伴う。少なくとも監督は、大きなプレッシャーがかかる場面で道具を使う意味をよく考え、使ったほうがいいのか、ベンチに置いておいたほうがいいのかを検討する必要があるだろう」と述べている。
PK戦が面白くなり、プレッシャー対処法も教えてくれる一冊
「史上最強」と言われ、北中米W杯の目標に「優勝」を掲げる日本代表。それならば、絶対に目を背けてはならない重要な要素であるPKについて考えておくことには価値があるだろう。そして我々ファンにとっても、サッカーのワンプレーであるPKにこれほど奥深い世界があることを教えてくれる本書には一読の価値がある。
いみじくもサッカーファンの作家・橘玲氏が帯で述べているとおり、「PK戦が100倍面白くなる。そのうえ、緊張するときどうすればいいかも教えてくれる」一冊なのである。
〈全2回の2回目/はじめから読む〉
