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カタールW杯PK戦で日本が使ってはいけなかった“あるもの”…森保ジャパンが知っておくべき「なぜ超一流選手がPKを外すのか」のプレッシャー心理学
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2025/04/26 11:06

カタール大会クロアチア戦、PK戦で南野拓実はPKを阻まれる。そこに至るまでには意外だが重大なチームの「ミス」がいくつかあった
PK戦で監督ができること
ヨルデット氏は、PK戦において、すべてを選手個々の技量とメンタルタフネスに任せるのではない、監督による心理学的なマネジメントの方法がある、と主張している。そのためにはさまざまなアプローチが考えられるが、本書で提案しているひとつのやり方が、「PK戦のようなプレッシャーの大きな勝負の直前では、しゃべるのは監督一人だけにしたほうがいい」ということだという。スタッフやアシスタントコーチではなく監督一人がその場を仕切るべきだ、というのだ。
再び本書によれば、
《カタールワールドカップでPK戦を制したチームの監督は、みなこの原則にきちんと従っていた。例外はなかった。アルゼンチンとクロアチア、モロッコは、PK前に監督が一人でしゃべっていて、監督の声だけが選手の耳に直接届いていた。逆に負けた側の監督は、原則を守れていなかった。例外はなかった。》
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という。
日本代表が「使うべきでなかったもの」とは
日本の森保監督も、「キッカー選びは自分で進めたが、あとはアシスタントに任せ、主にアシスタントがタブレット端末を使って選手に戦術的な情報を伝えていた」。そして、このやり方のなかに、さらにある驚くべき「ミス」があったというのだ。
《意思疎通ではアイコンタクトが重要になる。(中略)監督が基本コミュニケーションツールであるアイコンタクトを積極的に活用するのは当然にも思える。しかし驚いたことに、監督のなかには選手の注意を惹くのに道具に頼り、面と向かって話すことで生まれる直接的な絆をないがしろにしている者がいる。
PK戦の前には、メモ帳やタブレット、紙などがよく用いられるが、これらが常に役立つとは限らない。今後については確たることは言えないが、少なくともカタール大会ではおもしろいことに、PK戦を制したチームで道具を使っていた国は一つもなかった。逆に負けた側は、最後に選手をまとめるべきタイミングでどこも道具に頼っていた。