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首位打者・小園海斗は「まだ言えません」巨人を3タテして首位に立ったカープに見える小さくとも着実な「変革」の成果
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前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/04/14 11:02

巨人との3連戦で計8安打を放ち、打率.418と首位打者を走る小園
ポジションを奪う若手とは違い、開幕投手を務めた森下暢仁は「超主力」となることが求められる。自身もそれを自覚して臨むシーズン。さらなる高みにたどり着くため、新たな球種を習得した。
昨季までは、直球と横に変化するカットボールに、カーブやチェンジアップといった前後の緩急を加えた投球が中心だった。昨季はフォークを投じていたが精度が安定しなかった。今季はそこに新たな縦の変化球“縦スラ”が加わった。
「もともとマエケンさんに教えてもらったツーシームを投げようとしていたんですけど、ツーシームのように抜く球種よりも、カットボールのように引っかけて投げる方が自分には合っていたんです。ツーシームはどう投げても球が弱かったんですけど、縦スラは強さもあったし、動きも出ていた」
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自主トレをともにしたタイガース前田健太から学んだツーシームは、納得のいく精度には至らなかった。だが、春季キャンプも終わりオープン戦が始まっていた3月上旬、キャッチボールで右手を「抜く」のではなく引っかけるように投げた球が縦にストンと曲がった。
エースの自覚
開幕まで3週間を切った3月8日のヤクルトとのオープン戦で初めて投げ、自分のものにした。開幕から2試合連続で先制2ランを浴びたが、いずれも失点はその一発で踏みとどまった。開幕戦では新球種を打者1巡目までは封印し、2巡目から配球に織り交ぜたことで阪神打線に追加点を許さなかった。登板2試合目で今季初勝利を挙げ、ここまで3試合に登板して2勝1敗、防御率1.71をマークする。
「シーズン入っての結果がすべて。しっかりチームを引っ張っていけるようにしたい」
数字以上に、表情ひとつ変えないマウンドでの立ち居振る舞いから、チームを背負う責任感がにじむ。
いくら「変革」を掲げられても選手はそう簡単に変わるものではないし、方法やスピードは人それぞれだ。今見える変化がこのまま順調にいくとも限らない。ただ、見逃してしまいそうな小さな変化でも、その積み重ねがやがて大きな変化につながる。シーズンはまだ序盤。広島の変革の成果が見られるのは、もう少し先のことになりそうだ。
