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甲子園の風BACK NUMBER
「激化するスカウト活動とは一線」「部員は1学年13人前後。育成時に進路提案」でセンバツ準優勝…名門・智弁和歌山を支える「ご縁」とは
posted2025/04/02 11:01

センバツ準優勝を果たした智弁和歌山。部員数の少なさやスカウト活動など、名門校の中で独自の取り組みをしている
text by

間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama
ご縁があった子どもたちと一緒に日本一を
部員数が多ければ、能力の高い選手とめぐり合える可能性は高くなるかもしれない。一方、指導の目が行き届かない、練習メニューに制限がかかるといったデメリットを指摘する声もある。
甲子園常連校でプロ野球選手も数多く輩出している強豪校の中には、部員数に上限を定める高校は少なくない。例えば、大阪桐蔭や愛工大名電は1学年15~20人前後に制限している。
今春のセンバツで準優勝した智弁和歌山も少数精鋭のチームづくりを進めているが、他の強豪校とは少し事情が異なる。チームを率いる中谷仁監督は「ご縁があった子どもたちと一緒に日本一を目指しています」と話す。
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智弁和歌山は1学年の部員数を13人前後と決めている。その理由には、まず学年ごとの生徒数のキャパがある。野球部員が在籍するスポーツコースは生徒の人数が15人前後。今春3年生になる学年から陸上部の駅伝選手が数人加わったが、それまでは野球部だけでクラスを構成していたという。野球部の塩健一郎部長は「元々、野球部は1学年10人でしたが、投手の分業制やBチームの試合を組む目的で人数を増やしました」と説明する。
育成には「進路」も含まれる
スポーツコースと言っても普通科のため、主要五教科の授業は他のコースと同じように行われる。ただ、5時間目や6時間目の体育の枠から野球部の練習ができるカリキュラムとなっている。
1学年13人前後の部員数は、勝利と育成を両立する上でバランスが良いと智弁和歌山は考えている。1学年10人で計30人の部員になると、ポジションやけが人などの問題でAチームとBチームの2つに分けるのが難しい。すると、試合経験に差が生まれてしまう。一方、計40人ほどであれば、AチームとBチームがそれぞれ練習試合を組める。選手の入れ替えによるチーム内競争も活発になり、結果的にチーム力の底上げにつながる。
そして、智弁和歌山の育成には「進路」も含まれている。塩部長が語る。