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大谷翔平に「迷惑をかけたくない」地元・岩手県奥州市の“節度ある距離感”とは? 応援団の担当職員「大谷選手で市の広報はしません」現地のリアル
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byNanae Suzuki
posted2025/03/19 17:30

“日本の顔”のひとりとなった大谷翔平。地元・岩手県奥州市の人々は、どんな距離感で大谷の活躍に接しているのだろうか
鳥海さんが担当する「大谷翔平選手ふるさと応援団」では、パブリックビューイングの開催やオリジナルグッズの配布、企画展などを行っている。もちろん、いずれも営利目的ではない。ふるさと応援団の設立趣旨に賛同し、「ふるさと応援サポーター」に登録している奥州市内の企業・団体等の数は289(2025年3月時点)にのぼる。
取材に訪れた奥州市役所の庁舎内には、大谷の右手を象った金色の握手像が設置されている。その周囲には応援メッセージが書き込まれた「OHSU METER」のほか、シーズン中は日々更新されるマグネット式の成績表が並ぶ。また、プロ入り当時の2013年に地元広報誌の取材に答えたインタビュー記事も掲示されていた。エンゼルス時代は赤で統一されていたポスターやのぼり、ノベルティのカラーは、ドジャース移籍にあわせて青に一新されたという。
「ここまでの選手になるとは…」地元職員の驚き
せっかくなので、3Dスキャナで本人の手の型を取り、南部鉄器の技術を用いて制作された握手像を握ってみる。大きな手だ。真鍮の冷たさが掌に残る。取材中も、何組かのファンが訪れて大谷との握手を体験していた。
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握手像が作成されたのは大谷が渡米する前年の2017年。規格外の存在になる前から、地元が特別な期待をかけていたことがよくわかる。
「最初はプロやメジャーで頑張ってほしいなってところから始まったんですけど、正直ここまでの選手になるとは……。本当に嬉しいかぎりです。でも、個人的にはいまだに驚きのほうが大きいかもしれません」
そう言って、鳥海さんは「あまりお金もかけられないので、コツコツとやっています」と照れくさそうに微笑んだ。たしかに、本人の協力のもと作成した握手像はさておき、それ以外の掲示物は決して大がかりなものではない。だが、その手作り感がむしろ好ましい。
地元で暮らす人々にとって、大谷選手とはどんな存在ですか? そう問いかけると、鳥海さんは実感を込めてこう答えた。