15歳プロ契約→27歳で異例の引退「100%出せないならプロ失格だと…」“早熟の天才MF”がいま明かす浦和での後悔「僕に柔軟性が足りなかった」 

　3年ぶりに古巣に戻ると、居場所はなかった。完成されたチームに割って入ることができず、公式戦に1試合も出場できないままシーズンの終わりを迎える。試合勘は鈍り、ゲーム体力も低下。かつてはできたはずのプレーとのギャップに最後まで悩まされた。

「どうしても、元の“100”に戻らなかったんです。ピッチで自分の良さが出せなくて……」

　96年シーズン限りでヴェルディ川崎から契約満了を告げられたときには静かに受け入れた。同年途中に京都パープルサンガ（現京都サンガ）へ移籍していた先輩のラモスから「うちにこい」と誘われたが、気持ちはすでに固まっていた。菊原は当時を回想する。

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「100％の自分を出せないのであれば、プロ選手としてはダメだ、と思い込んでいました。僕の中では、自分の良さを最大限に出すのがプロであり、それを見せられないのであれば、選手失格という感覚があったんです。僕には僕のプレースタイルがありましたから」

　年齢は27歳。足も体もまだまだ動いた。サッカーへの情熱が消えたわけでもない。なぜ、そこまで頑なだったのか。長い歳月が流れたいま、もう一度、自らに問いかける。しばらく考えを巡らせ、胸の奥にあった思いを明かした。

「自分本来のパフォーマンスを再び見せる自信がなくなったのかもしれないですね。大学生の頃は、どんなプレッシャーがきても、ボールを取られなかったですし、チャンスをつくれましたから」

　菊原は30年近く前の自分を思い返すと、ふと穏やかな笑みを浮かべた。現役を退いた後、ピッチの外から年齢を重ねてプレースタイルを変えて活躍する選手たちも見てきた。ケガでパフォーマンスを落としても、時間をかけて復活を遂げたプレーヤーも知っている。

「いまなら、現役を続けていたでしょうね。たとえ、80％のパフォーマンスしか出せなくても、1年、2年続けていれば、90％、95％になっていく可能性もあります。でも、当時はそう思えなくて」

　それでも、早くに引退を決断したことは次の選択肢につながっていく。

〈最終回に続く〉

#4に続く

「翔哉、日本代表でプレーしたくないか？」27歳で引退…“早熟の天才”菊原志郎が“天才少年たち”に贈った言葉「昔は僕も翔哉と同じでした」