濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
『鬼レンチャン』で話題を集めた上谷沙弥が告白「300m走の練習の時から泣いていた」“敗者引退マッチ”に挑む人気悪役レスラーの切実な願い
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/03/06 11:04
3月3日、中野たむとの「敗者退団マッチ」に勝利した上谷沙弥
番組後に明かした本音「300m走の練習の時から泣いていた」
「メンタルも身体も極限状態で、本来の自分をさらけ出してしまった。でもあの番組に関しては、ベビー(フェイス)とかヒールとか関係なかった。プロレス界を背負って出たつもり」
上谷はそう振り返る。
「今年の目標は世間との闘い。ここで爪痕を残さなきゃって、気持ちとしては崖っぷちに立っていた。本番だけじゃなく300m走の練習をしてる時からずっと泣きながらやってたよ。今やらなかったら、これから先も変わらないでしょ。自分以外に誰がやるんだって思ってた。結果、SNSのフォロワーが1万人以上増えたってことは、プロレス界の“外”に届いたんだと思う」
「こんなの詐欺じゃないか」ファンの怒り
ADVERTISEMENT
中野たむとの敗者退団マッチは、セコンドが乱入を繰り返す荒れた展開の末に上谷が勝利した。試合後のやり取りの中で、敗れたたむは引退をかけての対戦を求め、上谷も了承した。上谷も赤いベルトとともに引退をかけるという。
“敗者引退マッチ”の舞台は団体最大のビッグイベント、4月27日の横浜アリーナ大会。この展開に多くのファンが激怒した。どちらかが退団してしまうと胸を痛めながら見ていたのに、横浜アリーナへの伏線でしかなかったのか。YouTubeで無料中継(同時接続6万強)したのも宣伝か。こんなの詐欺じゃないか……。
ファンが怒るのも当然だった。“敗者退団”はうやむやになっていた。スターダムは4日の一夜明け会見でたむの退団を正式に発表。横浜アリーナまでの試合はフリーとして参戦するという。
しかしなぜ、上谷はベルトだけでなく引退をかけるのか。後楽園で勝った上谷がリスクを背負う必要は本来ないのだ。
「これが私のプロレスにかける覚悟の証」
上谷は言う。ヒール転向がウケたが、単に“キャラ”でやっているわけではない。女子プロレスを、スターダムを盛り上げるために全身全霊で打ち込んでいる。ヒールになった経緯を辿れば、所属ユニットの離散やサイン会でのファンからの暴言があった。自分が生きる道はこれしかないと腹を括っての“ヒール上谷”なのだ。


