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『鬼レンチャン』で話題を集めた上谷沙弥が告白「300m走の練習の時から泣いていた」“敗者引退マッチ”に挑む人気悪役レスラーの切実な願い

posted2025/03/06 11:04

 
『鬼レンチャン』で話題を集めた上谷沙弥が告白「300m走の練習の時から泣いていた」“敗者引退マッチ”に挑む人気悪役レスラーの切実な願い<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

3月3日、中野たむとの「敗者退団マッチ」に勝利した上谷沙弥

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 女子プロレス団体スターダムは2月2日、3月3日と2カ月連続で“聖地”後楽園ホール大会の超満員札止めを記録した。

 2月の動員は同会場で団体史上最多の1614人。3月は最多更新となる1635人の観客が詰めかけた。その原動力となったのが、どちらの大会でもメインイベントに登場した上谷沙弥だ。昨年夏から闇堕ち=ヒール転向を果たしてコスチュームを黒に。反則も厭わない闘いぶりでむしろ人気を高め、年末の両国国技館大会で団体トップの証である“赤いベルト”ワールド・オブ・スターダムのチャンピオンになった。

たむの要求で「敗者退団マッチ」に

 上谷は2月大会で鈴季すずを下し王座防衛に成功。3月は前王者の中野たむとの対戦だった。試合はタイトルマッチではなく、たむの要求で「敗者退団マッチ」として行われた。

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 負けた選手は団体を去る。過酷なルールにファンからは悲鳴が上がった。しかしこれしかないとたむも上谷も考えた。上谷はたむとの試合で負傷し、長期欠場した経験がある。たむは白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)、赤いベルトともに上谷に奪われた。ヒールとなった上谷の反則にも苦しめられてきた。

 ただ、ヒールである上谷を応援する者も多かった。単に悪役だから嫌われて「負けて退団してしまえ」ではなかったのだ。反則も含めて好き放題に暴れ、楽しそうに高笑いする彼女の姿をファンは支持した。SNSで最も多かったのは、こんな意見だと上谷。

「今回ばかりは両者リングアウトのような不透明な結末でいい。両者KOでもいい。とにかくどちらにも負けないでほしい。退団なんてしてほしくない」

鬼レンチャンで見えた、上谷の“涙の覚悟”

 上谷の人気と注目度に拍車をかけたのが、2月23日に放送された『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ)だ。この日はスポーツスペシャル回で、上谷は女子300m走サバイバルに出場した。5分間の休憩のみで300m走を連続して行い、最下位が脱落していく“レンチャン”勝負で、上谷は12人の1回戦からトップ4人の決勝に残った。

 敗戦目前から根性で勝ち上がるなど名場面を見せた上谷。ヒールらしくカメラに向かって毒づくこともあったが、決勝の後は疲労と悔しさで号泣している。事前インタビューではまったくの“素”で登場し、出演の目的を話した。

「今、女子プロレスがブームと言われてるけど爆発的な何かが足りない。テレビに呼ばれるのが昭和世代のダンプ松本さん、長与千種さんで止まってるのが悔しくて。世間の人に(今の女子プロレスを)見てもらえるきっかけがほしいんです。世間は今のプロレスを全然知らないんです」

 涙をこぼしながら想いを吐露する姿に、出演者たちも「めっちゃええ子やん」、「なんで悪役してんの」。

 自分をさらけ出したから、視聴者にも届いた。放送後、上谷のXアカウントはフォロワーが1万3000人増えたそうだ。インスタグラムは1万5000人増。しかもまだ増え続けている。

【次ページ】 番組後に明かした本音「300m走の練習の時から泣いていた」

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