Number ExBACK NUMBER
「大食いは“食事の延長”ではない」TV大食いを“スポーツに変えた”フードファイター・小林尊の本音…細身の素人大学生が見せた「伝説のデビュー戦」
text by

荘司結有Yu Shoji
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/02/17 11:00
「大食い界のプリンス」と呼ばれた伝説のフードファイター・小林尊のインタビュー(第1回)
「今の時代なら、半分虐待ですよね(笑)」
そのポテンシャルの源泉とは何なのか。彼に問うと「野球部時代の食トレじゃないかな」と言う。
「部活の帰り道にコンビニでカップラーメンとか唐揚げとか食べた後に、さらに家でも普通にご飯を食べるでしょ。父親には『味噌汁をかけてでもいいから食え』と何杯も白米を渡されて。今の時代なら、半分虐待ですよね(笑)。
でも、そのおかげか、どこかで食べることを感覚的にスポーツのように捉えていたんだと思います。食べ物を見ると『どうやって効率よく胃に収めようか』という発想が生まれてくるんです」
ADVERTISEMENT
目の前に置かれた食べ物をいかに多く、速く食べるか瞬時に戦略を立て、相手の動向を見ながらここぞというタイミングでスパートをかける。小林にとって大食いは初めからエンタメではなく、ファイトだった。
「大食いは“食事の延長”ではなくスポーツ」
鮮烈なデビューを果たした小林は、その爽やかな出で立ちもあり“大食い界のプリンス”と一躍注目の的に。複数の芸能事務所からタレント契約のオファーもあったという。しかし、彼はそれらのスカウトを断り、大学卒業後、就職せずにフードファイターの道を歩み始める。
それは、大食いがいずれスポーツになるという確信めいた期待と予感ゆえだった。
「実際にバトルを体験して、これはスポーツだという感覚を得たんですよね。食べ方の戦略とか、試合前の緊張感や勝った時の高揚感が野球部時代のそれに近かったんです。大食いを『マナーが悪い』とか批判する人って、“食事の延長”として見ているからだと思うんです。でも、そういうバイアスを取り払ったら、これってスポーツと言えるものになるんじゃないかなと。
大食いを一発芸にして芸能界に入ったとしても『まあ行ってもこれくらいだろうな』という天井が見えるじゃないですか。でも、大食いをスポーツにするなんて誰も考えてこなかったことで、どこまで行けるかというポテンシャルがずっと大きいわけですよ。すでに大食いはブームになっていましたし、変わっていく瞬間に立ち会える幸せみたいなものは感じていましたよね」

