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「中国で“遼神”の異名を持つ男」世界一の囲碁棋士・一力遼とは何者か? 常識では計れぬ頭脳…小2の自由研究で「掛け算の法則を新発見」 

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北野新太

北野新太Arata Kitano

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photograph byIchisei Hiramatsu

posted2025/02/08 11:00

「中国で“遼神”の異名を持つ男」世界一の囲碁棋士・一力遼とは何者か? 常識では計れぬ頭脳…小2の自由研究で「掛け算の法則を新発見」<Number Web> photograph by Ichisei Hiramatsu

2024年に応氏杯で日本人初タイトルを獲得した一力遼

「自然数の中でも特別な数字だと思います」

 名前にある数字「1」を愛する。

「掛けても割っても解は変わらない。自然数の中でも特別な数字だと思います」

 2024年9月8日、一力は国際戦「応氏杯」を制した。4年に一度の開催で「囲碁界の五輪」とも呼ばれる究極のタイトルを手にして世界一の棋士になった。

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   準決勝ではかつて人類代表としてAIと対峙した同い年の柯潔を、決勝では前回大会で準優勝した24歳の謝科を撃破。世界最強国・中国が誇る両雄を敵地で屠った。

 無敗の3連勝で謝科を圧倒した決勝五番勝負ではAIの読みを超える絶妙手を2度も放っている。勝負所での一力の手をAIは一時的に「疑問手」と判断し評価値を落としたが、数手進むと判断を「好手」と覆した。極めて稀な現象を大舞台の盤上で何度も出現させたことは世界一の称号を手繰り寄せた事実を超える価値を有する。

 昭和から平成へと時代が移り変わる頃まで囲碁最強国は日本だった。ところが、今世紀に入って以降、国策も背景に競技人口を増やした中国と韓国では競争が激化していく。幼少期からハングリーに夢を追う少年たちが苛烈な戦いに身を投じ、世界を舞台に活躍し始めると日本は勝てなくなった。一力は世界でも実力者に数えられるが、主要大会の頂点を見据える場所には至っていなかった。

「世界戦で勝つことに重点を置いてきました」

 世界で勝てない現実は、国内での人気に翳りをもたらす要因になってきた。レジャー白書によると、競技人口は1982年の1130万人から減少の一途を辿り、'24年は120万人に。将棋の460万人の約4分の1に留まる。

 江戸時代から継承される最古のタイトル本因坊戦は'24年から規模を大幅縮小し、落日の碁界を白日の下に晒した。

 だからこそ一力の世界制覇は個人としての栄冠を凌駕する意味を持つ。

「世界戦で勝つことに重点を置いてきました」

【続きを読む】2月12日まで初月「99円」の新年特大キャンペーン中!サブスク「NumberPREMIER」内の《中国で「遼神」と呼ばれる囲碁棋士》“世界No.1”一力遼が語る「鬱に近い状態」からの復活、そして井山裕太と藤井聡太【インタビュー】で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。

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