将棋PRESSBACK NUMBER
「恐怖心から弱気に」藤井聡太14歳に“29連勝を許した”8年後のタイトル初挑戦…増田康宏27歳とは何者か「矢倉は終わった」大胆発言集の背景
posted2025/02/05 06:01

藤井聡太棋王に増田康宏八段がタイトル初挑戦する棋王戦が開幕した
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Nanae Suzuki
藤井聡太棋王(22=竜王・名人・王位・王座・王将・棋聖を合わせて七冠)に増田康宏八段(27)が初挑戦している第50期棋王戦コナミグループ杯五番勝負。第1局は2月2日に高知県高知市「文化プラザかるぽーと」で行われた。「羽生を倒すのはお前だ」と励まされた奨励会時代、「矢倉は終わった」に代表される大胆な物言いの根拠など、増田の盤上盤外のエピソードや、藤井棋王が激闘を制した第1局の戦いを田丸昇九段が解説する。【棋士の肩書は当時】
「羽生を倒すのはお前だ」と言われた小学生時代
増田は1997年11月4日、東京都昭島市で生まれた。将棋を5歳で母親から習うとすぐに上達した。羽生善治九段らの棋士を輩出した「八王子将棋クラブ」(7年前に閉所)に小学1年のときに行くとアマ初段と認定され、翌年には四段に昇段した。
羽生は年に1回、八王子将棋クラブに通う子どもたちに指導対局した。その中で2年続けて大駒落ちで勝ったのは増田だけだった。やがてプロ棋士を目指し、2008年に森下卓九段の門下で、棋士養成機関である奨励会に6級で入会した。
ADVERTISEMENT
増田は奨励会時代、才能を見込んだ八王子将棋クラブの経営者から、いつもこのように励まされた。
「羽生を倒すのはお前だ」
そして14年10月、四段に昇段して16歳で棋士になった。その後は公式戦で活躍し、16年には新人王戦で棋戦初優勝した。増田は「打倒羽生」を念頭に入れていたが――注目されることになったのは5歳年下の少年棋士との勝負だった。
16年10月に最年少記録の14歳2カ月で四段に昇段し、5人目の中学生棋士となった藤井聡太四段である。
藤井相手に奨励会時代には2勝していたが…
17年2月にインターネット放送局「ABEMA」が将棋チャンネルを開局した。その記念企画として藤井四段がタイトル保持者、A級棋士、若手精鋭と対戦する「炎の七番勝負」が行われた。