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「次はイノウエがアメリカに来る番だ」“井上尚弥に衝撃KO負け”から1年半…あのフルトンが完全復活「熱血トレーナーが再戦希望」
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杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2025/02/04 11:05
WBC世界フェザー級王者のブランドン・フィゲロア(右)に判定勝ちを収めたスティーブン・フルトン
減量苦ゆえにフェザー級には短い滞在になると公言していたが、ロバート・アコスタというストレングスコーチをチームに加えた今戦では体重調整も思いのほか順調だったとか。それゆえに、ラヒームは「あと2年くらいはフェザー級で戦える。この階級の他のベルトも取りにいかせたい」と公言している。
だとすれば――フィゲロア戦前の状況を思い返せば信じ難い話だが、フルトンがこのまま勝ち続けると仮定すると、2026年にはフェザー級への完全昇級が期待される井上との再戦も不可能ではなくなるのだろう。
少々先走ると、今後もサブトレーナー&友人としてフルトンを支えていくというラヒームもまた井上との再戦に色気を見せていた。それと同時に、一つ重要な注文をつけていたことも、選手への愛情が少々過剰になりがちなこの熱血トレーナーらしい。
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「日本でも多くのファンがスティーブンの勝利を喜んでくれているのはわかっているし、本当に嬉しく思う。思慮深く、いつも親切なミスター・ホンダ(帝拳ジムの本田明彦会長)からも祝福の電話を受け取ったよ。スティーブンももちろん井上と再戦したいはずだ。ただ、リマッチがあるなら、今度はアメリカで戦わせたい。第1戦は井上側の希望に添い、母国でタイトル挑戦する権利を与えたのだから、次は彼がアメリカに来る番だ。日本での方がビッグマネーイベントになる? スティーブンはもう大金を手にしたから、お金は気にしていないよ」
こういった強気な主張まで含めて、重要な勝利でフルトン陣営にも“らしさ”が戻ってきたと見るべきか。いずれにしても、まだ“モンスター”との再戦の話は早すぎる。今はただ、技巧派ではあっても確かな人間的魅力を持った元王者が井上戦の敗北から立ち直り、逞しさを感じさせる形でトップ戦線に戻ってきたことを素直に喜びたい。
“スクーター”らしい従来の守備力を基盤に、状況に応じてより攻撃的な“クールボーイ・ステフ”のスパイスも加えることができれば……。軽量級の楽しみな役者として、フルトンがもう一度大舞台に立つことは決して不可能ではないはずである。

