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「次はイノウエがアメリカに来る番だ」“井上尚弥に衝撃KO負け”から1年半…あのフルトンが完全復活「熱血トレーナーが再戦希望」 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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posted2025/02/04 11:05

「次はイノウエがアメリカに来る番だ」“井上尚弥に衝撃KO負け”から1年半…あのフルトンが完全復活「熱血トレーナーが再戦希望」<Number Web> photograph by Getty Images

WBC世界フェザー級王者のブランドン・フィゲロア(右)に判定勝ちを収めたスティーブン・フルトン

「今戦で重要だったのは”打たせずに打つ(hit, not get hit)”こと。足を止めての打撃戦ではなく、昔のスティーブンのように戦うのがプランだった。スティーブンは打ち合うのが好きで、フィゲロアも同じだ。ただ、特に当日はメキシカンのファンが多かったから、打ち合うと(メキシコ系米国人の)フィゲロアにポイントが流れる怖さもあった。だから“彼らにブーイングさせろ”と伝えた。相手のファンから罵倒されるとしたら、それは私たちが望む試合ができているということ。足を動かし、打たせず、観衆にはブーイングさせる。“スクーター”はその通りのクリーンな試合をしてくれたよ」

フルトンに開かれた新たな可能性

 最近のフルトンは“クールボーイ・ステフ”と称されることを好むが、古くから彼を知る者たちは愛着を込めて彼を“スクーター”と呼ぶ。その中の一人であり、15歳からフルトンと歩んできたラヒームは井上戦後、話し合いの末にフルトンのチーフトレーナーから外れている。代わりにチーフになったボジー・エニスはダイナミックな攻めで知られるIBF世界ウェルター級王者ジャロン・“ブーツ”・エニスの父。もちろん攻撃指導に秀でたトレーナーである。

 新トレーナーに教えを受けたカストロ戦のフルトンは少々アグレッシブになり過ぎ、中間距離で被弾したことが誤算となった。そんな経験を経て、フェザー級での2戦目となったフィゲロア戦では見違えるようにアジャストメントを施してきた。

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 エニストレーナーの指導による攻撃力アップも重要だが、もともと打たれ強いわけではないフルトンには守備意識の高い戦い方が必須。その部分を修正して臨み、見事に奏功したことは、今回もサブトレーナーとしてセコンドに入ったラヒームのこんな言葉からも伝わってくる。

「敗れたボクサーは、その要因を外部に求めたがる。ただ、実際には答えは外部ではなく、自分の内側にあるものだ。スティーブンも同じで、井上に負けて傷ついた後、別の方法で戦おうとしたが、カストロ戦ではいい試合ができなかった。真実を知り当てるためには、得てして厳しい道を通らなければならない。そんな経緯から今回、もともと得意とする戦い方に戻したことで成功したんだ」

 たった1試合で評価と近未来の展望が大きく変わるのがボクシングの世界。“商品価値を保つには絶対必勝の戦い”と見られた一戦にこうして快勝し、フルトンの行く手にはまた新たな可能性が開けてきている。

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