「恐怖心から弱気に」藤井聡太14歳に“29連勝を許した”8年後のタイトル初挑戦…増田康宏27歳とは何者か「矢倉は終わった」大胆発言集の背景 

　藤井は好調に攻めたが増田に受け止められ、結果的に桂損した。藤井はその代償に4筋と6筋の歩を伸ばし、後手陣にじわじわと圧力をかけた。そうした柔軟性が藤井の強みである。

　増田は桂を捨てて飛車を働かせたが、その時期が遅れた。本譜は飛車を自陣に押し込められ、やむをえず飛車を切って2枚角の利きで先手陣に迫った。藤井は増田の攻めを丹念に受け、機を見て的確に反撃した。増田の早指しで中盤では両者の残り時間は2時間も開きがあったが、最終盤では藤井より先に増田が秒読みに追い込まれた。

　藤井は後手玉を鮮やかに寄せ切り、棋王戦第1局を127手で先勝した。終局時刻は19時18分。残り時間は藤井3分、増田1分。

棋王戦第1局の様子　©日本将棋連盟

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　両対局者は終局後に、次のように感想を語った。

　藤井「桂を取られて苦しい形勢が続きました。終盤は分からないまま指したが、2枚の桂が働いて攻めがつながりました」

　増田「中盤は後手としてまずまず戦えると思っていました。終盤は藤井棋王との差を感じました。次局までにその差を埋められたらいいなと思います」

　棋王戦第2局は2月22日に石川県金沢市「北國新聞会館」で行われる。

増田の大胆な物言いと、率直な将棋観

　増田は「矢倉は終わった」「詰め将棋は意味ない」「感想戦は必要ない」など、大胆な物言いで物議をかもしたことがあった。ただ自分の将棋観を率直に表現したもので、それなりに根拠があるようだ。

　第1図（外部配信の方は関連記事からご覧になれます）左は「矢倉」囲い。右の雁木の囲いと比べると、桂を使えないのが欠点だという。

第1図

「詰め将棋」を解く力は実戦にそれほど有効ではないという考えを持っている。ただ自身は100手を超える難解な詰め将棋を解いている。長手数を読めるトレーニングになり、実戦で中終盤のミスが少なくなったという。また終局後の「感想戦」で対局者は必ずしも本音を出さないので、自宅にさっさと帰って研究した方が効率的だと語ったこともある。

　そんな増田が2年前の年末イベントで、「クリスマスデートが決まった」と告白して話題になった。その彼女との交際は現在も順調のようだ。棋王戦で巻き返す「勝利の女神」になるだろうか――。〈将棋特集：つづく〉