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ドイツ人番記者の視点「サノは性スキャンダルをピッチで償った」同僚に愛されるMF佐野海舟…じつは「岡崎慎司の存在」がマインツ順応の背景に
posted2025/02/01 17:00

マインツでレギュラーを即獲得した佐野海舟。活躍ぶりの背景をドイツ人番記者に記してもらった
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ミヒャエル・イーベルト(『キッカー』誌マインツ担当)Michael Ebert
photograph by
NurPhoto/Getty Images
スキャンダル後、マインツ上層部の落ち着いた対応
佐野海舟のブンデスリーガ初挑戦は、これ以上ないほど困難なスタートになってしまった。この日本人選手がドイツで初めてヘッドラインを賑わせたのは、彼の母国で女性にセクシャルハラスメントをして拘束されている、というものだったのだ──しかも最悪なタイミングで。
2024年7月3日、1.FSVマインツ05は鹿島アントラーズに推定移籍金250万ユーロを支払い、当時23歳の佐野と4年契約を結んだ。しかし、彼はその11日後に30代女性に対する不同意性交の疑いで逮捕されたのだ。休暇中に周囲の人々にしばしの別れを告げに帰ったはずの日本でそんなことが起きるとは、マインツの関係者の誰一人として予想していなかった。
クラブ周辺は激震に揺れ、契約解消さえ囁かれていたが、上層部は落ち着きを保っていた。佐野の代理人や弁護士と緊密に連絡を取り、逮捕から約2週間後に釈放されると、双方の関係者は安堵した。そして件の新戦力は、マインツがオーストリアで張っていたキャンプに遅れて合流した。
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とはいえ、それですべてが解決したわけではなかった。クラブを熱狂的にサポートするウルトラスやファン団体は、「まるで何事もなかったかのように振る舞っている」とフロントを糾弾。これに対し、クラブは次のように回答した。
「日本の法務省によるカイシュウ・サノに関する捜査は打ち切られた(8月8日に不起訴処分が決定)。当該選手へのこの嫌疑については、捜査当局による法的措置がすべてだと私たちは理解している」
その後もこの話題は燻っていたが、少しずつ収束していった。佐野側から公式の声明はなく、クラブは報道陣に「労働法に則り」センシティブな話題に触れることを禁じた(ドイツの法律では、雇用者が従業員の心身の健康を保護することが義務付けられている)。
佐野が「簡単にはいかないだろう」と語っていた理由
そして佐野はピッチ上のパフォーマンスで、周囲にかけた迷惑を償っていった。
8月24日のブンデスリーガ開幕戦から先発し、チームのリーダーのひとり、ナディーム・アミリと中盤でコンビを形成。この元ドイツ代表MFは好機に攻め上がることを得意としており、佐野はより低い位置でボールを回収し、バランスを保っている。昨年2月に途中就任してチームを降格圏から引き上げたボー・ヘンリクセン監督は、序盤戦でこのパートナーシップに手応えを感じたようで、以降もふたりを中盤に据え続けている。
「簡単にはいかないだろうと思っていました」と佐野は当時、マインツを本拠とする日刊紙『アルゲマイネ・ツァイトゥング』に話した。