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圧巻KO劇「ただのワンツーではなかった」元世界王者・飯田覚士が驚いた井上尚弥の”とんでもないフィニッシュ”…キム・イェジュン挑発の意図とは?
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/01/30 17:01

直前の挑戦者変更を受け絶対王者・井上尚弥はどう戦ったのか。圧巻のKO劇のポイントを元世界王者・飯田覚士氏が徹底解説した
「キム選手はスーパーバンタム級で戦ってきたこれまでの選手よりスピード、パワーを含めて実力的に一枚落ちるかなとは思います。それでもサプライズを起こそうと準備はしてきたし、それを実践しようとしてきました。世界ランカーの実力者であったことは言うまでもありません」
今回、井上の当日体重は前日の55.2kgから7.7kgを増やし、これまでのキャリアで最も重い62・9kgでリングに立っている(キムは62.1kg)。当初対戦予定だったサム・グッドマン(オーストラリア)を想定すればスピード重視でここまでは引き上げなかったに違いない。急な対戦相手の変更も結果的には1階級上のフェザー級の感触を確かめられることにもつながっている。
2025年の大勝負に向けいいスタート
飯田は言う。
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「実力差のある挑戦者に圧倒的に勝って当たり前と見られて、しっかりとKOで勝ったとしてもパウンドフォーパウンドのランキングに大きな影響を与えることもきっとありません。それでも、格の違う下位のランカーと世界戦をするのは初めてということ、当日の体重を増やしたこと、情報のあまりない相手を一発で仕留め切ったことなどいろんな経験ができたことは尚弥選手にとって得るものも少なくなかった試合だったのではないでしょうか。これからはラスベガス、サウジアラビアと海外での試合に打って出て、フェザー級のタイトルも見据えているという話。ケガもなく、ダメージもなく、隙のない戦いを見せつけることができました。2025年の大勝負に向けて、とてもいいスタートを切ったように思います」
やらなくてもいい試合を、絶対にやったほうがいい試合にした。当たり前に勝つミッションを、完璧にやり遂げた井上尚弥自身が意義あるものにしたと言えるのではあるまいか。
<前編から続く>
