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「こんなに大変なのか!」福士加代子が明かす「笑福駅伝」開催秘話…「コーチになるには」青学大・原晋監督に相談も「愕然とした」理由とは
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/02/04 11:00

マラソン・長距離でオリンピックに4大会連続で出場した福士加代子。3年前に競技を引退し、セカンドキャリアについて語った
「ガチで走るのもいいけど、40kmも走れない人も楽しめて、みんなが集まれる場所にしたい」
「私が好きな人たちを呼んで走ってもらっても面白い」
「イベントの後は、それをつまみにして宴会ができたら」
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さまざまなアイデアが福士さんの頭の中を駆け巡った。
思い立ったが吉日。すぐさま行動に移した。
「そういう大会が作れたら面白いなと思って、まずは、お世話になった香川県の人たちに話をしに行ったんです」
RUNプロジェクト第1弾「こんなに大変なのか!」
福士さんにとって香川県は、合宿や大会等で何度も訪れており、“第三の故郷”と呼ぶほど縁のある土地だ。最初は円卓を囲むほどの少人数でコーヒーを飲みながら「何ができるか」を話し合っていたが、次第に熱を帯び、とんとん拍子で話は進み、具体的になっていった。
こうして、走ることで全国を笑顔にするチャレンジ『福士加代子RUNプロジェクト』は始まり、その第一弾として香川県で駅伝大会を開催することが決まった。
しかし、大会を企画・運営することは、福士さんが想像していた以上に大変な作業だった。
「友達が動いてくれたので、人さえ集まれば簡単にできると思っていたんです。でも、そういう問題じゃなかったんですよね……。県が絡んで、市が絡んで、警察が絡んで、交通関係が絡んで、お金も必要。大会を開くことが、こんなに大変なのか!って、もうびっくりですよ。でも、言ったからには1回はやらないといけない。私の名前が知られているうちに、できれば引退から1年以内で動いたほうが、開催できるんじゃないかっていうことで、ちょっと急ぎました」
多くの人々のサポートがあって、福士さんが主宰する『笑って走れば福来たる駅伝』、通称『笑福(わらふく)駅伝』は開催に漕ぎ着けた。第1回大会が開催されたのは2023年4月。現役を引退してから1年と少し後のことだった。
大会には香川県内外から1200人以上が参加した。1区間は約2km。普段運動をしていない人でも、ちょっと頑張れば走り切れる距離にこだわった。
「1kmだと短いし、3kmだと長い。2kmはちょうど騙される距離(笑)。ほどよく疲れて、やった感が出るのが2kmかなと思いました」
福士さんが当初思い描いた通り、幅広い年代の参加者が家族や友人とタスキをつなぎ、ランニングを楽しんだ。福士さんの両親も青森から駆けつけたという。
「陸上って何歳になってもできる。40歳からでも60歳からでもやれる生涯スポーツだと思うんです。81歳のおじいちゃんがお孫さんとチームを組んで走っていましたから。このチームには“笑福大賞”をあげました(笑)。こんな感じで1~3位以外にも賞を作り、幅広い世代の人が楽しめるイベントにしました」
「2回目で楽勝にできるねって」
大会を開くまでがあまりにも大変だったので「1回だけでいいや」と思ったのも事実。それでも、大会を終えた時の充実感や感動は大きかった。