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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「判定勝ちは無理。もっと攻めろ!」中谷潤人と名参謀の“打倒イノウエ”幻プランはなぜ実現しなかった? 敗戦当日の深夜、トレーナーが明かした“誤算”
posted2026/05/05 11:03
前に出た試合後半、井上尚弥のパンチを被弾する中谷潤人
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
◆◆◆
4ラウンドまで中谷潤人が自らアクションを起こすことはほとんどなかった。中間距離から鋭い踏み込みでジャブと右ストレートを放つ井上尚弥の打ち終わりを狙って、迎撃の左を振る。リアクションもほぼこのパターンに限られていた。
手数とアグレッシブネスで勝る井上尚弥にポイントが流れるのは明白だった。事実、4ラウンドまではジャッジ3者がフルマークで井上を支持している。それでも中谷は4ラウンドまで「待ちのボクシング」を貫いた。試合後、序盤の戦略について問われた中谷はこう答えている。
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「井上選手は学ぶ力がすごく強いので、“学ばせない”ということでああいう戦い方になりました」
序盤のポイントを捨ててでも、井上に情報を与えない。中谷のパンチのアングルは多彩で、タイミングも独特だ。しかし最初からそれを見せていくと、井上に適応されてしまう。中盤以降に勝負をかけるために、強いカードは切らずに残しておく。その意図は十分に理解できる。とはいえ、4ラウンドを終えた時点で3者が「40-36」とするところまで想定内だったのだろうか?
「あの井上が押されている」
5ラウンドから趨勢が変わる。中谷が自ら仕掛けるシーンが明らかに増えた。踏み込んでの左ストレート、そして至近距離でのコンビネーション。初めてジャッジ2人が中谷に「10」をつける。だが井上も簡単には主導権を渡さない。遠間からの右ストレートが正確に中谷の顔面を捉える。6ラウンド、7ラウンドはジャッジが割れた。まだ、完全に中谷のペースとは言えない。
そして8ラウンド、井上の動きがやや落ち始めた。中谷はさらにギアを上げる。アンドリュー・モロニーをKOした左オーバーハンドに、ボディからテンプルへとつなぐ右のダブル。序盤に温存していたカードを一気に切り始める。初めてジャッジ3者が中谷を支持した。9ラウンドも中谷が攻勢に出る。井上がロープを背負う場面が増えた。10ラウンドも中谷の勢いが続く。右フックがカウンターで浅くヒットし、コンビネーションも冴えわたる。あの井上が押されている。


