「なんで…空振りが取れないんだ？」偏差値72“北海道No.1進学校”出身ドラ1投手が受けた“プロの衝撃” 1年上の田中将大は…「全然、レベルが違った」 

　もともと「進学校のドラ1」と好奇の目にさらされてきた寺田は、ますます異端扱いされるようになった。ホテルで同部屋になることが多かった先輩ピッチャーの土屋朋弘やコーチ陣は「頑張れよ」と理解を示してくれたが、ほとんどの選手からは「俺たちはお前とは違うんだ」といった否定的な目を向けられた。

　歯がゆさはあった。ただ、「しょうがないな」と割り切れる自分もいたと、寺田は言う。

「プロに入ってからも文武両道をしているわけですから、『変なやつだ』と思われていたのは確かだし、あまりよく思われていなかったのもわかっていました。『理解されないんだろうな』と思って、勉強している姿を人に見せないようになっていきました」

ADVERTISEMENT

　人から許容されないことを自覚しつつ、寺田なりにプロ野球選手でありながら大学で学ぶことへの覚悟を示してきた。

増えた練習量…それでも結果は出ず

　それこそが、圧倒的な練習量だった。

　高校時代に連続写真や映像で自らのピッチングフォームを探求した姿はプロでも健在で、制球力を課題としていた寺田は室内練習場でひたすらネットスローに励んだ。トレーニングルームでは体の内側から強くするためにインナーマッスルを鍛え、体の柔軟性を養うべくストレッチにも余念がなかった。

　ところが、このような実直さを裏切るように、寺田のパフォーマンスは2年目から顕著に低下していった。このシーズンも一軍登板はなく、二軍でも9試合20回1/3を投げ防御率6.20と成績は振るわなかった。

練習量を顕著に増やした2年目以降も実績に繋がらなかった。その焦りは寺田を追い込んでいくことになる　©︎Sankei Shimbun

　寺田はそんな自分を蔑んだ。

「なんでドラ1だったんだろう？」

　成功体験となった称号は次第に疑念へと変わり、呪縛となっていた。やがて、彼から自信をも奪っていった。

「結局はメンタルなんじゃないかなと思いますけどね。『自分なんて』って想いがすごく強くて。みんなより練習をやってきましたけど、疲労が溜まった状態で練習する。体のバランスを崩す。また練習するっていう悪循環でしたね。だから、やればやるほど自分が思うような体の動きを再現できなくなって。そんなハートで成功するわけないですよね」

【次ページ】　3年目に右肩をケガ…戦力外の決定打に