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「平本蓮、朝倉未来は“エンタメ枠”」RIZIN王者クレベルの本音…血染めの“年またぎ決戦”はなぜ観客を惹きつけたのか?「本物のベルトはここにある」
posted2025/01/06 17:07
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
午前0時を回っても、試合は続いていた。RIZIN設立10周年の節目を飾る2024年大晦日の『RIZIN DECADE』。リング上では王者・鈴木千裕にクレベル・コイケが挑戦するRIZINフェザー級マッチが行なわれていた。
「誰も席を立たない…」年をまたいで続いた大熱戦
大会は12月31日の午後1時からスタート。第1部と合わせると、第2部のセミファイナルまでにすでに21試合が消化されていた。途中で何度か休憩が挟まれたとはいえ、見続けるには相当の体力と集中力が必要になる。
しかし、この一戦の途中で席を立つ者は皆無だったのではないか。2万3010人(主催者発表)の大観衆は白熱したシーソーゲームにいやがうえにも惹きつけられていたのだ。
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1ラウンド中盤、リング中央を陣取った鈴木が右ストレートをヒットさせると、クレベルは一瞬前にかがむような体勢になったが、追撃のハイキックをかわし即座にジェスチャーで「効いていないぜ」とばかりにアピールした。
その後、クレベルは両足タックルから引き込むようにして鈴木を得意の寝技に誘う。ラウンド終了間際、クレベルがヒールフック(踵固め)を狙うと、鈴木は空いている右足でグラウンド状態での踵落としを浴びせていく。クレベルが仕掛けをほどくと、鈴木はもう片方の左足でも思い切り踵を落とし、ピンチを回避した。
振り返ってみれば、2024年11月のRIZINアゼルバイジャン大会で地元のヴガール・ケラモフからRIZINフェザー級王座を奪ったきっかけを作ったのも踵による一撃だった。
試合前からお膳立ては整っていた。両者は23年6月24日、RIZIN札幌大会で当時クレベルが保持していたフェザー級王座に鈴木が挑戦する形で初対決を迎えた。しかし決戦前日の計量でクレベルは体重を400gオーバー。制限時間内にリミットまで落とすことができず、その場でタイトル剥奪を宣告された。試合は鈴木が勝った場合のみ王者として認められ、対するクレベルの方は勝っても公式記録は無効試合となる形で行なわれた。
どう考えてもモチベーションは鈴木の方が上だったが、いざ試合が始まるとクレベルはすぐテイクダウンを奪ってパウンドを打ち続け、最後は腕ひしぎ十字固めで鈴木を葬った。元チャンピオンとしての意地を見せた格好となったが、勝敗は無効試合なのでどちらも喜べない一戦となってしまった。