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落合博満43歳「私の時代は終わった」…落合がショックを受けた“23歳の天才バッター”「オレは終わっていた選手なんだ」日本ハムで涙を見せた日
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph bySankei Shimbun
posted2024/12/30 11:16
日本ハム時代の落合博満(43歳)。「おれは終わっていた選手なんだ…」珍しく弱気ともとれる発言をした
「おれは終わっていた選手なんだ」涙を見せた日
国税庁の高額納税者番付プロスポーツ部門で「1位落合、2位イチロー」が発表された翌日の5月17日、近鉄戦で落合はタイムリー含む2安打を放ち、打率.339まで上昇させる。首位打者はイチローで打率.364。そして、両者はこの時点で安打数「43」とリーグトップタイで並ぶのだ。23歳の天才バッターと最多安打争いを繰り広げる43歳の打撃職人。本塁打を捨て、ヒット狙いに徹しているかのような打撃術に見る者を唸らせた。だが、ここが落合の19年目シーズンのピークだった。
セ・パ両リーグ1000安打にあと3本と迫ったオレ流は、記録達成まで9試合を要してしまう。5月28日のダイエー戦、初回に若田部健一が投じた139キロの速球を逆らわずにとらえて一、二塁間を抜くヒットを放ち、大杉勝男以来、史上2人目の偉業にたどり着く。
一塁上でヘルメットを取り、記念の花束を東京ドームのファンに向かって穏やかな表情で掲げてみせる背番号3。試合後、「パで9年、セで10年、長いことやっていれば、いろんなことがある」と語るオレ流の目は赤く潤んでいた。
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「(巨人を自由契約になり)おれは終わっていた選手なんだ。雇ってくれた日本ハム球団に感謝しないとな」(日刊スポーツ1997年5月29日)
<続く>
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