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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「寿人さんがいなかったら…」3度目優勝の夜、佐藤寿人の胸で青山敏弘は泣いた…「トシはチームのエンジンでした」いま、青山引退に佐藤が泣いた
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/12/28 17:04
キャプテンを引き継ぎ、ふたりで幾度もゴールを決めた青山の現役引退に、佐藤が熱い言葉を贈った
そして今秋、青山から連絡を受けた。引退を決めました、とストレートに伝えられた。あらためて感謝を伝える4歳年下の後輩の声は震えていた。そして佐藤も泣いた。
最後に優勝できなかったのが…
どんな言葉を掛けたのか。そう尋ねると、佐藤はちょっと悔しそうな口ぶりになった。
「トシには『まだお疲れさまという言葉は掛けないよ。優勝してシャーレを掲げる青山敏弘の姿を見てから言うよ』と。そして『カズ(森﨑和幸)、コウジ(森﨑浩司)たちもサンフレッチェを牽引してきたけど、トシは4回目のリーグ優勝を勝ち取って引退する唯一無二の選手だから』とも。だから最後、優勝できなかったのは僕からしても悔しい。それでも彼がサンフレッチェのエンブレムを身につけて最後に出た公式戦のACL2(東方戦)でゴールを奪うんですから、やっぱり持ってるなと感じました」
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勝ち点3差で首位ヴィッセル神戸を追う展開だったが、逆転優勝した2013年シーズンを再現することはできなかった。出番のなかった青山は、ベンチで一緒になって戦っていた。誰よりも悔しそうな38歳のベテランの姿があった。
次の「エンジン」になる選手を育ててほしい
青山はミヒャエル・スキッベ監督からの要請を受け、来季はトップチームのコーチを務めることになる。佐藤はこうエールを送る。
「21年間、普通にこれだけ長くプレーするだけでも大変なのに、彼はケガを繰り返しながらもたくましく戻ってきて、これだけの結果をサンフレッチェにもたらした選手。ケガやキャプテン時代の苦しみも含めていろんな経験をしているので、選手の気持ちも分かるだろうし、絶対いい指導者になると思います。トシはサンフレッチェのエンジンでした。次のエンジンとなる選手を育ててほしい。トシならやってくれると思います」
シーズンを終えた後、佐藤のほうからあらためて「お疲れさまでした」と伝えている。もう涙は必要なかった。2人の間には笑顔だけが広がっていた。
〈第1回から続く〉