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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「悔しかったけど…こんな面白い試合ある?って」石川祐希も山本智大もブランも信頼した“おじいちゃん”深津旭弘が37歳で味わった最高の試合
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKoji Aoki/AFLO SPORT
posted2024/12/28 11:03
イタリア戦を振り返ったセッター深津旭弘(37歳)。五輪での経験がSVリーグへの活力になった
まさに息をするのを忘れそうなほど緊迫した展開の中、深津はリリーフサーバーとしてコートに立った。第5セット11-11の場面だ。
「あのチームでリリーフサーバーとして出たのは初めてでしたし、あの会場で僕、試合でサーブを打ったことがなかったから、正直、ここで?というのはありました。『(甲斐)優斗じゃねえの?』って(苦笑)。
たぶんそのままスムーズに回ってパンと出ていたらヤバかったけど、タイムがあって間ができたのでよかったです。とりあえず走って、肩を回して。最初は『やべえ、大丈夫かな?俺届く?』って……。ネット越えるかな、じゃなくて、ネットの下くぐっちゃうんじゃないかと心配してましたけど、まあなんとか(苦笑)」
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見ているほうまで鼓動が高まったサーブはスピードに乗り、イタリアのエース、アレッサンドロ・ミキエレットの体勢を崩させたが、オポジットのユーリ・ロマーノに決められた。
「あの時のサーブはまずミスらないことに重きを置いていました。運よくいいトスが上がったので、その瞬間『これは入る』と思いました。“攻める”という選択肢もあったけど、ちょっとやめました。確実に、それなりのことをやって、何か起こってほしいなという感じでしたけど、自分にはまだ、あそこで何か起こせる力がなかったってことですね(苦笑)」
インタビュー中、深津は「まだ」という言葉をよく使った。五輪を経験した37歳が、「もういいか」ではなく、「まだ」と思える理由とは。
〈後編につづく〉