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「しんどいのは嫌いだったから…」陸上推薦で高校進学も1年で退部…元“根性ナシ”だった32歳の山本良幸が『SASUKE』で「黒虎のエース」になるまで
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNumberWeb
posted2024/12/25 11:02
現在“ミスターSASUKE”こと山田勝己が率いる「黒虎」のエースである山本良幸。完全制覇も視野にはいるアスリートの予想外の学生時代とは?
もの思う春である。人にあこがれるよりも自分が主役になりたくて山本は陸上部に入った。SASUKEにあこがれ、地域の体操クラブで運動能力を磨いていたおかげで、才能は、あった。だが根性は、なかった。
「練習して強くなるっていうよりも、できるだけきつい練習は避けたい、技術とか楽にできるやつで勝ちたいと思ってました。思い切り走るのもしんどいのも嫌いだったから、走り高跳びをやってたんです」
誰に頼まれたわけでもないのにSASUKEの練習に日々邁進する現在。その姿からは想像もつかないが、それが当時の山本の性分だった。「跳躍力もあったんで、ポンポンとうまいこと大阪でも上位に行けました。中2のときには大阪で一番の成績を残せたんです。でも冬に練習しないもんだから、中3で全然記録が伸びなかった。それがめっちゃ悔しくって」
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その思いを晴らすべく、高校は陸上の強豪校として知られる関大北陽に進む。しかし、ここでも山本を待っていたのは飛躍ではなく挫折だった。
「顧問の先生が見抜いていたんです。走ったり、メンタル部分だったり、根本的に僕に必要な部分を。でも冬の練習メニューがエグすぎて胃潰瘍になってしまったんです。朝練があるから5時半の電車に乗っていくんですけど、それもしんどくなってしまって」
中3の時に比べたら走力は大幅に上がり、跳躍力も自ら実感できるほど成長していた。だが、伸びていく成績とは裏腹に、体と心が悲鳴を上げた。
胃潰瘍の診察のために病院で初めて胃カメラを飲んだ時、激しい嘔吐反射でネガティブな感情が押し寄せてきた。そして思ってしまった。
「何のためにこれをやってるんやろ……」
練習に行くのが怖くなった。グラウンドから足が遠のいていった。
高1の2月、泣きながら顧問に退部を申し出た。申し訳なさでいっぱいだったのだ。「いつでも帰ってこい」。そう言ってもらったが、やはり復帰はできなかった。
打ち込んでいた陸上から離れ…山本は?
それから山本はどうしたか。
「……」
どうしたか。
「……もち食ってすごい太ったんですよ」
もう少し聞いてみる。
「きなこのもち。高2の時に砂糖まぶした安倍川もちの作り方を覚えて、アホみたいに毎日10個ぐらい食ってましたね」